夢小説

□明日の朝に。前
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明日の朝に。
 

 目が覚めて最初に目に飛び込んできたのは私の部屋の天井。
でも、今日の私にはいつもと違う天井が見える。
薄汚れた長い年月を思わせる天井がこれ以上ないくらいに輝いて見える。
それだけじゃない。
朝日なんて眩しいから顔も向けたくないっていつも思ってた。
でも。今日は朝日ってこんなに美しいんだ、なんて思ってしまう。
そう、それほどに私の心は躍っているのだ。だって、今日はアルミンの部屋にお泊りの日なのだから。
 それは昨日の仕事終りのこと。私とアルミンの班は別々。
だから、普通に一日を過ごしていれば会えない日なんて珍しいものじゃあない。
むしろ会える日のほうが珍しい。
お互いの仕事がそれぞれある。
だから、始まる時間も終わる時間もばらばらなのだ。
初めはアルミンに会えないことで気分が落ち込んでいる日も多々あったが、最近ではそれが普通になってきていた。
久しぶりにアルミンが恋しくなってしまった昨日、アルミンは私に声をかけてくれた。
「ルーナ! 」
誰も居ない廊下にはその声だけが透き通るように聞こえた。
「明日、仕事早く終わるんだけど。よかったら、僕の部屋に泊まりに来ない? 遅くなっても構わないよ」
私の答えはもちろん「はい」。
アルミンの声と重なってしまったから、アルミンはくすくすとおかしそうに笑っていた。
でも、私の頭に手を乗っけて「待ってるよ」って。
 
 「ルーナ、ルーナ! 」
「は、はいっ」
我に返ると目の前には私の肩を大きく揺する先輩。
ええっと、これはどういう状況でしょうか。
「大丈夫? なんか、一人で笑っててちょっと不気味だったんだけど……」
苦笑いを浮かべる先輩。
まだ、私の口の緩みは直らない。
「さては、彼氏のことだな」
さすが、先輩。お見通しですね。
なんて言えば強烈なでこピンが飛んできた。
「痛ったあい! 」
自分の額を両手で押さえる。
まあ、押さえたところで痛みが引くわけではないけれど。
「べっつに、アルミンのこと考えるのは自由ですけどっ。顔に出さないでよね」
先輩は私の鼻をつまんで言った。
「ひっ、やめへくらさいよっ!」
先輩の手を振りほどくが、また捕まえられる。
何回同じことを繰り返していただろう。
気が付くと、もう仕事終了時刻になっていた。
「あっ、先輩! お先に失礼します! 」
そう言って走り出した私を「仲良くね」という先輩の言葉が背中を押した。

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