夢小説

□ごめんね。
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ごめんね。



今日は久しぶりにナナバの仕事が早く終わった。
だから私はナナバの部屋に向かう。
いつもは甘えられないから今日は思いきり甘えよう。
トントン。
いつぶりだろうな、こうやってナナバの部屋に来るのは。
付き合って初めのうちはお互いに部屋を行き来していたけど、ナナバがだんだん出世していってからは部屋を訪れることは互いになくなってしまった。
昔から私の仕事量はそんなに変わらないけど、ナナバはすごく忙しくなった。
ゆっくり二人で会える時間がだんだんなくなっていった。
寂しい、そうは思っていたけどナナバの邪魔をするような真似は私にはできなかった。
でも今日はそんなこと気にしないで思い切りナナバと一緒にいられる。
私にとってはとても嬉しくて、幸せなことだ。
「ルーナ? 」
前の扉は開いていた。
「ふふ。ノックしたのはルーナなのに。考え事でもしてたのかい? 」
穏やかに笑うナナバを久しぶりに見たような気がする。
仕事でいつも切羽詰っていたから。
「ううん。考え事なんてしてないよ」
入ってもいい? と尋ねる代わりに私は首をかしげた。
「どうぞ」
ナナバにはそれが通じたみたいだ。
まあ、かなり長い付き合いだから。
私はなんだか胸を張りたい気分になった。
「ごめんね」
後ろで静かに扉を閉めたナナバが言った。
「何が? 」
ナナバは後ろから私のぎゅっと抱きしめた。
「寂しい思いさせちゃった……」
いつものナナバからは想像も出来ないか細い声。
「どうしたの。いきなり」
ナナバの鼓動が私に伝わってくる。
びっくりするくらいそれは静かで穏やかだ。
「ずっと。わかってた。ルーナが悲しい思いをしてるって。
 ずっとわかっていたけど、私は何もできなかった。
 忙しいことをずっと言い訳にして……」
私の首に冷たい何かが伝っている。
「ナナバ……泣いてるの? 」
ナナバの顔を見ようと振り返ったけど、そこには泣いているナナバはいなかった。
代わりに満面の笑みを浮かべているナナバがいた。
「ルーナ、私はいままでも、これからもずっとルーナのことが好きだよ」
温かくて甘いキスが私とナナバを包みこんだ。

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