夢小説

□特別でいいんですか。
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特別でいいんですか。



「仕事が終わったら、俺の部屋に来い」
今日初めて兵長と出会って、言われた言葉がそれだった。
上司、いや、兵長からの命令でなければ、私はきっと首を縦には振らなかっただろう。
そんな訳で、仕事終りの今、私は兵長の部屋の前にいる。
扉を叩こうとする私の右手を私の左手は止める。
呼ばれたから来たけど、兵長の仕事はまだ終わっていないんじゃないか。
出直すべきだろうか。
「何やってんだ」
「兵長!? 」
兵長には私の言動も心の中もお見通しのようだ。
目の前の部屋の中から聞こえるその声。
「失礼します」
部屋に入ると、ソファーに座っている兵長が目に入る。
兵長直々の部下ではない私は、兵長の部屋に入るのは初めてだった。
噂には聞いていたけど、埃一つ落ちてない生活感を全くと言っていいほど感じない部屋だった。
「まだ、お仕事中でしたか? 」
座っている兵長を上から目線で見ないように、わざと兵長と目を合わせないでいる。
「もう、終わった」
兵長の短い返事。
いつものことながら、少し落ち込んでしまう私がいる。
部屋に呼ばれたのだから、もしかしたら兵長は私に気があるのではないかと少なからず思っていたから。
「さすが、ですね」
「おい」
「はい? 」
「なぜ、そんなによそよそしいんだ? 」
相変わらず目を合わせようとしない私に苛立ちを込めたような声で兵長は言った。
「いえ、そんなこと……」
口ごもる私は兵長に促されるまま、兵長の隣に腰を下ろした。
それと同時に兵長の頭が私の腿の上に下ろさせる。
「へ、兵長!? 」
何だ、とでも言いたげな目で見上げられる。
そんな目、しないでくださいよ。
「兵長、これは、どういう……」
私の言葉は兵長の声に遮られる。
「ルーナよ」
「は、はい」
「俺は、人を好きになったのは初めてかもしれい。
 特別な方法なんて、俺には……」
兵長はそこで言葉を切った。
私のおなかに顔をすり寄せるかのように、抱きつく兵長。
「兵長、それって……
 私、馬鹿ですから、告白だって勘違いしちゃうじゃないですか」

目が覚めて、最初に飛び込んできた空が青いと、私は気分がいい。
昼休みに中庭で一人日向ぼっこをしていると、後ろから私を呼ぶ声がした。
「ハンジさん」
私の上司であるハンジ分隊長。
怖いくらいの笑顔で立っている。
まあ、いつもハンジさんの笑顔は不気味以外の何ものでもないのだけれど。
「リヴァイから聞いたよ」
知ってるんですか? と尋ねた私にハンジさんはまるであいさつをするような自然さで言った。
「ルーナがリヴァイのこと好きだって、教えてあげたその日にね……」
「はい? 兵長は知ってたんですか? 私の気持ち! 」

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