夢小説

□僕は可愛いの。
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アルミン視点です。

僕は可愛いの。



「はあ。」
自分でも思うほど、大きなため息が出た。
食事の時間ではない食堂には僕と、エレンしかいない。
「どうした? 」
異様な僕のため息に驚いたように目を見開くエレン。
そのまま、僕の顔を覗き込むように見た。
エレンと目が合う。
そんな真っ直ぐな目で見ないでほしい……
「いいね。エレンは……」
ため息交じりに呟いた。
僕を見据えるエレンの目が揺れた。
「どうしたんだよ。いきなり……」
戸惑っているんだろう。
言葉の最後が聞こえなかった。
別に、今、始まったことではない。
エレンのこと昔から、ずっと羨ましいと思っていた。
でも、これ程までに羨ましいと思ったことは今までにあったのかな。
僕の記憶の限りはなかったように思うけど。
「おい! アルミン、どうしたんだよ。」
エレンは僕の肩を大きく揺らした。
今の僕って一体どんな顔してるんだろう。
「あのね……」

それは、今朝のこと。
「ルーナ、おはよう。」
朝から大好きなルーナに会えるなんて気分がいいな。
あいさつの声は他の人と比べて高くなる。
まあ、もともと男らしい声ではないんだけど。
「おはよう、アルミン。」
笑顔で返してくれたルーナ。
まるで、お花が僕のまわりを飛んでいるみたいだ。
ルーナの笑顔を見ると、いつも思う。
きっと、口元が緩んでいたんだろうな。
「ふふ。アルミン、何か良いことあったの? 」
僕より身長が小さいルーナ。
必然的に僕を見上げる形になる。
可愛いな。
今すぐ抱きしめたくなる衝動を必死で抑えた。
だって、さっきから、男の先輩達の視線が痛いくらいに僕に突き刺さっているから。
調査兵団のアイドル的存在のルーナと話しているのだから当たり前だけど。
「うん。とっても、良いことあったんだ。」
僕なりの精一杯の笑顔で答える。
ルーナに僕の気持ちに気づいてほしい、という密かな願いを込めて。
「ふふ。アルミンって可愛いね。」
「へっ⁉ 」
音のような声を出すので精一杯だった。
その後に衝撃的な言葉を聞いたから。

「そう言えば、エレン、髪切って、かっこよくなってたよ。って、ルーナが言ったんだよ。」
熱く語り過ぎたみたいだ。
エレンの顔が引きつっている。
「ああ。そ、それは……」
なんて、返していいか、エレンは迷っているんだろうな。
「ええ」とか「ああ」とかを繰り返している。
「僕もルーナにかっこいいとか言われたいなあ。」
もう、なにも返してくれないエレンを横目に大きな独り言を言った。
「エレン、何見てるの? 」
僕の後ろを見ているエレン。
僕の話を聞かないで、何を見てるんだよ……
「ルーナっ⁉ 」
二重で大きな目を更に大きくしているルーナが立っていた。
可愛らしいピンク色の唇が軽く開いている。
それをきゅっと閉じてからルーナが言った。
「アルミンは、可愛い、んだよ。」
真顔で言われた。
本当に真顔で。
そのまま踵を返すように、廊下の奥のほうへ走って行ってしまった。
「僕は可愛いの? 」
乾いたエレンの笑い声だけが静まり返った食堂に響いた。


「ルーナ。アルミンにかっこいいって言ってやれよ。気にしてるぞ。」

「エレン、アルミンに言わないでよ! 」

「恥ずかしくて、アルミンにかっこいい、って言えない、なんて言わねえよ。」

「エレン、言いそう……」

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