東巻 短編

□カチューシャ(甘)
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今日は巻ちゃんが俺の家に泊まりに来た。

昼間は一緒に山を二回登り、俺の家で夕飯を食べて風呂を入り終えた。

巻ちゃんは温泉が好きと言っていたので俺の家の温泉が体操気に入ったらしくご機嫌だ。


巻ちゃんはそのタマムシ色の長い髪をゴムで結んで自転車の雑誌を読んでいる。


「巻ちゃん。髪がまだ少し湿っているではないか。そのままで結んでいると傷んでしまうぞ」


そう言うと俺は巻ちゃんの髪をほどき、ドライヤーで乾かし始めた。


巻ちゃんの髪はふわふわしていて傷みもほとんど無い。


大分乾いていたため直ぐに湿り気はなくなった。


ドライヤーの電源を切ると巻ちゃんの髪を少し掬って指に絡ませる。


ふと巻ちゃんの顔を覗くと前髪が少し顔にかかっているのに気づいた。


「巻ちゃん。カチューシャしてみないか?」


「は?」


きょとんとする巻ちゃんの頭に部屋にある真っ白なカチューシャを付ける。


「ちょ、何して・・・」


俺がつけたカチューシャをとろうと頭に手を伸ばすが巻ちゃんの手を掴んで阻止する。


「巻ちゃん。カチューシャ似合っているよ」


「はぁ?」


真っ白なカチューシャは巻ちゃんのタマムシ色の髪によく映える。

しかも、少し前髪が上に上げられて巻ちゃんの顔がよく見えるようになったのでいいこと尽くしだ。


普段と少し違う巻ちゃんを見ているとなんだか不思議な気持ちになってくる。


「巻ちゃん・・・」


無意識に俺は巻ちゃんに唇を重ねていた。


巻ちゃんは一瞬ビクッしたがあとは抵抗などしないでキスを受け入れてくれる。


何度も角度を変えて繰り返し唇を重ねているうちに緩く開いた唇の間に舌を滑り込ませる。

巻ちゃんの舌を探せば巻ちゃんの方から絡めてくる。


巻ちゃんの手は俺の服の袖を掴んでくる。

そんな仕草も可愛くて巻ちゃんを抱きしめると巻ちゃんも抱き返してくれる。


そのままたっぷりとキスを堪能するとゆっくりと顔を離す。


巻ちゃんは真っ赤な顔に目を潤ませてぷいとそっぽを向いてしまう。


「巻ちゃん?どうかしたのかね?」


「別になんでも無いショ」


うしろから抱きしめると耳まで赤くしてしまう巻ちゃんに幸せを感じて巻ちゃんの髪に顔を埋める。


巻ちゃんと山を登る機会はあと少ないだろうが、例え山に登れなくてもこうしている時間も良いかもしれないと思ったのは巻ちゃんには内緒だ。


ーーENDーー

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