東巻 短編

□お昼ご飯
1ページ/1ページ

今日は、久しぶりに巻島と東堂の休みが重なったので巻島は千葉のファミレスへ来ていた。

東堂は巻島と会ってからずっとマシンガントークを続けていた。


店員が、巻島と東堂の頼んだ料理を持って来てくれたので一旦東堂もマシンガントークをやめて食べ始めた。


「千葉まで自転車で来るのは大変ショ?」


「そんなことはないぞ!巻ちゃんに会えると思うとあの距離も全く苦ではなかったからな!!」



東堂はビシっと巻島を指差すとわはは、と独特の笑い方で笑うとパスタを箸で食べ始めた。



それを見た巻島も料理に手をつける。


「ところで巻ちゃん。普段の食事はバランスよく摂っているのかね?」


「問題ないっショ」


東堂は食事などに関して母親並に煩い。
その事は嫌という程巻島は知っている。

もちろん巻島を心配しての事と分かっているため巻島も無下にはしないが。


「巻ちゃん!巻ちゃん!」


「ショ?」


「それは美味いのか?」


そう言い、東堂が指差したものは竜田揚げ。

竜田揚げなど何処でも食べることが出来る。


「普通に美味いショ」


そう答えると東堂は何故かキラキラとした目で巻島を見ていた。


「巻ちゃん!その竜田揚げを一口くれないか?」


「はぁ?」


東堂は巻島の目をじっと見続けている。


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


お互いに無言で暫し見つめあった。


「はぁ。ほらよ」


先に折れたのは巻島。
竜田揚げを箸でつまんで東堂の皿に乗せようとすると、東堂に手首をつかまれた。


「?・・・東堂?」


「巻ちゃんが食べさせてくれ」


「はあ!?」


東堂はあーんと口を開けて待っていた。


周りを伺うように見ると、巻島は箸でつまんだままの竜田揚げをゆっくり東堂の口に入れた。


東堂はもぐもぐと竜田揚げを咀嚼し飲み込むと、自分のパスタを箸でつまみ、巻島の前に差し出した。


一瞬ポカーンとしたが、東堂のやりたいことを理解すると巻島は湯気が出そうなほど顔を真っ赤にした。


やがて、恐る恐る巻島は口をあけると東堂がパスタを口の中へ入れる。


ほんのりとトマトソースの香りのするパスタを飲み込むと、巻島は東堂から視線を外して自分の料理を黙々と食べ出した。


痛んだ所などないタマムシ色の髪の隙間からのぞく耳が真っ赤になっているのは東堂しか知らないことだ。
















「今度は巻ちゃんを食べたくなってきたな」



「ショオ!?」



ーーーENDーーー
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ