長編

□プロローグ
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この街に居場所が無いと知ったとき
ワタシは消えてしまおうと思った。

街を見渡せる丘の上で
ぼんやりとそう考えていたら
空から天使が舞い降りてきた。

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夜の丘の上に人がいた。
虚ろな顔をした女であった。
私を見て尋ねてきた。

「アナタは天使ですか?」

この私を知らないのだろうか。
「これを見ても天使だと思うのか?」

自慢の赤い翼を広げて見せる。

「…悪魔なんですね」
「たわけ」
女はショックを受けたらしい。
暗い顔が更に暗くなった。

「お前は何をしていたのだ?」

「この街に居たはずの家族や友達が
全て居なくなったんです。
今見ている街は名前も見た目も一緒だけれど、
自分以外の建物も人も全て
違うものになってしまった。」
「…成程。」

俗に言う'電波'とやらか。

「お前の名は?」
「リンです。アナタは?」
「…本当に知らないのだな。」
笑みが零れてしまった。珍しいことだった。
人間界では結構有名だと自負していたのだが。
きょとんとするリン。

「すみません…悪魔はサタン様しか名前を存じ上げておりませ「悪魔ではないと何度言えば分かるのだ!?…ユーリだ。Deuilを知らないか?」
「すみません全く知りません。」
申し訳なさそうにしているが、イラッとした。
全く知らんと言われたのは初めてだった。


「…ユーリ様?」
「何だ?」
「何しに此処へ来たのですか?」

本来の目的を忘れていた。
「…買い物に行ったアホ犬が帰ってこんのだ。
そいつを捜しに来た。」
「犬に買い物させているんですか?!」

リンは衝撃を受けたらしい。
コロコロ表情が変わって、忙しそうな奴だ。

「…ユーリ様。」
「何だ?」
「ワタシも一緒に捜しましょうか?」
「…そうだな。頼もうか。」


それが彼女との出会いであった。

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