しゅごキャラ!
□1話
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「見た見たー カツアゲ撃退してるとこ!」
ある日の教室、誰かがそんなことを言った。
「やっぱり日奈森さんて凄いよねー」
「普通の子となんかキャラ違うっていうか」
「うかつに近寄れない感じ」
続いてざわざわと教室にいる人達が噂し始める。
「相変わらずウワサが好きだなー…」
まだざわつきのある中ぽつりと呟く苗字。教室の窓際、1番後ろの席でボーッと外を眺めている。それに比べ噂になっている当人…日奈森は澄ました顔で頬杖をつき脚を組んで座っていた。もちろん周りには誰もいない、皆遠巻きに見ているだけだ。
苗字はカツアゲや他のウワサが本当なのか気になって席を立ち1番前の席までスタスタと歩く。
「なぁ、カツアゲの本当なのか?」
「えっ」
「有名ライターとか」
「いや…本当って言うか…」
そうボソッと呟くと決まり悪そうな顔で視線を逸らす日奈森。あー、これは噂に尾ひれがついたのかと何となく苗字は気付いた。
「ってか、なんでそんなこと聞くの?」
少しムッとした顔。
「なんとなく。噂なんて当てにならんだろ?」
問いの答えに一瞬目をパチクリさせた。確かにそうだけど…わざわざ聞きに来る人なんていなかったし、あんまり喋ったことないよね。でもこれはチャンス?噂ばっかじゃなくて本当のあたしを知ってくれるかも!と考えていた日奈森の目の前にズイっと顔が近づいた。
「聞いてる?」
「!! えっとごめん、聞いてなかった」
うわぁっ!と叫びそうになるのを堪えて謝る。
「俺と仲良くしてくれないかなーって話」
苗字は黄色の目をじーっと見つめて返答を待つ。にしても顔が近い。青色の目に見つめられる日奈森は願ってもない話に内心嬉しさが募っている。が、
「近いってば!」
顔の近さに戸惑い仰け反る。もう少しで椅子から落ちそうだ。
「あぁすまん」
ぽりぽりと頬を掻きながら顔をさげた。日奈森は元の体制に戻りそっぽを向く。
「あ…あたしで良かったら。べっ別に嬉しいとか…そんなの全然思ってない…し」
語尾がだんだん小さくなり最後の方は苗字には聞こえていない。
「本当か!よろしくな」
日奈森に笑顔を向けて「また後で」と言い席に戻った。