Turn Over Life....


□平穏に。
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その男は、気づけば目の前をフラフラしながら歩く少女を目で追っていた。
両手には大きな買い物袋。簡単にへし折れそうなその体には不釣り合いな量だ。

その少女には見覚えがあった。いつも通勤に使う通りのカフェで紅茶を啜りながら本を読んでいる少女だ。見た目はただの不良だが、彼女からは物静かな雰囲気を感じられた。

少女とすれ違う。その時、彼女がバランスを崩したようで、すかさず受け止める。その男が顔を覗き込めばほのかに頬を朱色に染めて飛び退いた。助けてくてたお礼にといくつか林檎を買い物袋から取り出して男に手渡した。
男は驚いた。余りにも美しい手で。その男は微笑んで彼女からりんごを受け取った。

少女は男に微笑み返し、その場を去った。





この時、少女は何も知らなかった。





この世の中には知らない方がいいこともある。





「あぁ、嫉妬してしまったんだね。大丈夫、私が愛するのは君だけだ。」




彼の事も例外ではない。






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