Turn Over Life....


□Buona notte.
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「なるようになるだろう。」


彼の他人事のような呟きに苦笑いを浮かべ、ココアを飲み干す。
ご馳走様でした、とカップを手渡すと微笑んで受け取ってくれた。
普段は無表情な暗殺者の彼でもこうして素敵な笑顔を浮かべて今日を過ごしている。
きっと目の前の彼はかなりの実力者なのだろう。組織にいる期間も長いと言う。

どれだけの辛い思いをしてきたのだろう。
どれだけの窮地を乗り越えてきたのだろう。
...どれだけの死を与えてきたのだろう。

私も数ヶ月先、いや、数年後こうして笑って生きていることが出来るのだろうか。
不安がどっと押し寄せる。
それが顔に出ていたのか、彼の整った顔が近づいてこちらを覗き込んできた。

黒と赤の目とばっちりと目が合った。
近い...。


「大丈夫だ。お前ならやれる。」


『えっ...。』


彼は私の頭を撫でると、手を引きベッドに倒れ込んだ。
そのまま抱き枕でも扱うかの様にホールドされ、身動きが取れない状態になる。


「暖かいな、奏多は。」


『そ、それはよかったです...?』


動揺して謎の返ししかできない。


「言われるがままに男の部屋に入って来るとはな。お前は少し警戒心が足りないな。」


『すごく今更ですね。』


「ふっ...だが、怖くはなくなっただろう?」


『別の恐怖でいっぱいです。』


「とって食おうなんて思ってない。」


『尚更怖いです。』


ギシッとベットのスプリングが鳴ったかと思ったら、彼は私に覆いかぶさるような体勢に変えていた。要は押し倒された様な感じ。ちょっとなんでこうなった。
私は目を丸くすると同時に、体温が上がるのを感じとった。


『リゾット、さん...?』


「なに、"まだ"何もしないさ。」


彼の大きな手が私の耳元にかかる髪を退ける。
驚きのあまり、体が硬直したかの様に動かない。動かせない。

ゆっくりと耳元に近づく彼の整った顔。
窓から差し込む月明かりに照らされて、彫りの深い綺麗な顔が際立つ。
耳元に到達すると、落ち着いた声色で囁かれる。


『Buona notte.』


「....!おやすみ、なさい。」


彼はクスッと笑ったあと、元の体制に戻し寝息を立て始めた。

私といえば、何が起こったのかイマイチ理解できずにリゾットさんの抱き枕と化している。
もう、何が何だか心の整理がつかなくなり黙って目を閉じた。

彼はとても暖かく、心地よい睡眠をもたらしてくれた。
落ち着く心音、寝息、体温。彼の存在全てが恐怖に包まれていた奏多を癒したのだった。




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