氷帝
□放課後
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誰もいない教室、放課後
それは私にとっても仁王にとっても、都合の良い時間だと思う
グラウンドでは、野球部がかけ声をあげている
仁王をふと見ると、横顔がオレンジ色に染まっていた
「のぉ、美桜」
「ん?」
仁王は私を見ずに、外を見ながら言った
「暗い、暗い空じゃな」
私も外を改めて見る。夕焼け空だった
「空は、夕暮れだよ?オレンジ色だよ?」
私がそういうと、仁王は苦笑した
「...じゃぁ、俺帰るき」
仁王は“ばいばい”と言いながら、廊下で待っていた女子と消えていった
途端に胸が締め付けられた
“空は、暗い”
今なら分かる気がした
(さようなら、とは言えなくて)