バディ・コンプレックス:運命の2人

□第7話 もう一人のカップラー
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いつ寝たのか分からず目を開けると見慣れた天井が見えた

青葉が正式に軍人になって部屋を分ける事となりそれぞれ個室が当てられた

起きる気にもなれずかといって二度寝も出来ず仕方なく着替えて食堂に行って朝食を取った

「おはよう紅葉・・今日もあんまり元気なさそうだけど・・俺なんかしたか?」

「いや・・何も」

「そっか?・・まぁなにかあったらいつでも相談に乗るからな」

「ああ・・ありがと」

紅葉は違うと答えたが半分は違う
青葉はただ知らないだけで紅葉悩んでいる理由に関係はしている

周りはPV撮影の事で騒いでいたが紅葉の耳には何も入っていない
黙々と食事を食べているだけだ

食べ終えた後日課のトレーニングを始めた
体動かせば少しは気が晴れるんじゃないかと思ったからだ
だけど数時間動かしても晴れるどころか疲れた体のせいで更に気が重くなった

シャワーを浴びて汗を流し服を着ると当てもなく艦内を歩いた
すると窓から小型艇がやってくるのが見えた、警報も鳴らないから敵じゃないと分かったが少し気になる為格納庫に足を向けた

エレベータに乗りドアが開いて進んだ、下を向いていた為前が見えず人とぶつかった

「わっ・・!?」

「ッ・・・!す・・すみませんでした、前を見ていなかったので・・」

顔を上げてみるとまず目に映ったのはパイロットスーツだった
それだけで相手が少尉かそれ以上の階級の者だとわかり半ば反射的に頭を下げた

「いいよ、僕のほうこそこんな所に立っててごめんね?」

「いえ、少尉は何も悪くないです・・」

もう一度顔を上げて今度は相手の顔を見た
同じ男なのに見惚れてしまいそうなほど整った顔立ちをしていた
すると突然敬礼をして官姓名を名乗った

「フロム・ヴァンタレイ少尉、プロモーション撮影用のカップラーとして参りました」

フロムと名乗った少年は先ほど青葉たちに言ったことと同じことを紅葉にも言った

「・・あっ、遅れて申し訳ありません!自分は自由条約連合軍第3特殊部隊所属、渡瀬紅葉伍長です、先ほどは本当に申し訳ありませんでした」

「いいってそんなことは、それより君が紅葉君かぁよろしくね。紅葉君の噂は僕もよく聞くよ」

敬礼をして握手を求めてくるフロムに手を差し出して握手をした

「フロム、噂ってなんだ?紅葉ってそんなにすごい奴なのか?」

「あれ?ああそっか青葉君はまだ知らないんだね、特殊部隊の渡瀬紅葉と言ったら銃の腕前は軍の中でも凄腕と言われる三人の内の一人なんだ」

「うっそ!?紅葉ってそんなにすごい奴なの!?」

「別にそんな大したことじゃないよ、俺にはコレしか出来ることがなかったんだ」

目を伏せて言う紅葉に青葉は少し変に思ったがフロムはまだ続けた

「そんなことはないよ、僕も銃はあまり使わないけど紅葉君ほど上手くはないからね。それに飛んでいる手榴弾を全部撃ち返したり、一発で敵兵を倒したり僕に出来ない事が出来てるんだから同じ年代としては尊敬するよ」

「ッ!・・尊敬されるような事ではないです・・自分はこれで」

フロムの尊敬の言葉に嬉しく思いながらも取り合えずこの場から立ち去ろうとしたが肝心な事を思い出して振り返った

「あの・・プロモーションって自分は何も聞かされていないんですが?」


「はぁ?今朝艦長が言ってただろ?カップリング機が誤魔化しきれなくなったからって
おまえ聞いてなかったのか?」

「・・そうですか、すみません朝の記憶はあまり覚えていないので・・・」

「青葉君、彼大丈夫?」

「んーそれがここ最近元気がない感じなんだよなー、何度聞いても平気とか大丈夫しか言わないし、そもそも俺と目を合わせようともしないんだぜ!?」

「それはおまえがあいつに何かしたからだろう、そうでないと紅葉があそこまで暗いわけがない」

さっきまで見ているだけだったディオが口を開いて青葉を責めたが
当の本人は何もしていないと言う

「・・そうだ、紅葉君更衣室がどこにあるのか教えてくれるかな?」

「え?ええ、分かりました、こっちです」

頼まれてフロムを更衣室と艦長室を案内して去ろうとすると何故か一緒に入ることになった
フロムの考えている事はいまいち理解が出来なかった

撮影スタッフと青葉にディオが来たことでプロモーションビデオについての注意事項や立ち入り規制のエリアなど言い終えるとさっきから微笑んでいるフロムの視線に副長は気付いた

「ちなみに本艦は・・なんだ?」

「シグナスのクルーの皆さんは幸せだね、と。こんなに魅力的な上官殿と生死を共に出来るなんて」

「・・・・・・は?」

フロムの照れることなくそんなセリフを聞いた副長は癇に障ったのかやや怒り気味だった
他にも青葉は口を開けたままで呆けていてディオにいたっては「またか」とでも言いたそうな表情しかもエルヴィラは引いていた

隣に居た紅葉は心ここにあらずといった感じで何も聞こえていなかった

「ふぅ・・で本艦は現在作戦行動中ですのでいつ臨戦態勢ーー」

「そいつは願ったりだぁ!命を懸けたマジの戦いの中でこそ最高の画がゲットできるってもんですよ!」

ドッン!!

そんな音が艦長室に響いて音のして方へみんなが目を向けると紅葉が壁を殴っていた

「!?」

「っふっざけんなよ!!最高の画?まだ16.7の子供が命懸けての戦いをアンタらの画を撮る為に居るわけじゃないんだよ!!
そんなに撮りたいなら自分達で命懸けて撮りに行け!!」

「渡瀬伍長!!」

「ッ!・・・すいませんでした・・失礼します」

そう言って紅葉は艦長室を後にした
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