龍如長編(零)

□淵源 - 悪夢 -
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寒い、寒い。
でも、あつい。

熱い、暑い、アツイ。

凍えるような外の寒さ、唇が震える。
燃えるよな中の熱さ、全身が火傷するかのようだ。

連れ出された時の、外の寒さが痛い。
爆発した時の、中の熱さが痛い。

助け出された時の、外の寒さが苦しかった。


「っ・・・!」

はっ、と目が覚める。
あの夢の息苦しさからか、じっとりと大量に掻いた寝汗が気持ち悪い。

冬は、いつもそうだ。
過去が悪夢として、たまに甦ってくる。

「・・・気持ちが悪い」

ベッドから起き上がり、クラリと目眩がする体に鞭を打って、水を飲みにキッチンへ。

重い足取りで支度を終え、学校へと向かうために玄関へ向かう。
気分が優れないので、朝食は抜いた。

(今日は一段と、ひどいな・・・)

まるで、世界が回っているかのようだ。
フラフラとする危ない足取りで、凛生は道を歩いた。


教室に入り、講義が始まるまで机に顔を沈めた。
数分そうしていると、頭が誰かに叩かれた。

「よお、なんだ寝てるのか?」

次いで、降ってきた声。
まあ声が降ってこなくとも、自分を叩いた人物の正体など分かりきっていたが。

「・・・寝てるから話しかけるな」
「返事してる時点で起きてるだろ」
「・・・うるさい」
「・・・やけにダルそうだな、大丈夫か?」

凛生のあまりにも覇気のない声に、流石の谷村も異変を感じたようだ。
珍しくトーンを、心配の色に染めて言葉を繋ぐ。

「心配されるほど、落ちぶれてはいない・・・」
「・・・あっそ、ならいいけど」

彼に余計な心配をかけたくないためか、凛生は無理にトーンを戻して、憎まれ口を叩く。
そんな彼女の内心に気づいているのかいないのか、谷村は素っ気なく返した。

「・・・ま、お前の勝手だけど無理し過ぎるなよ」

ぽん、と彼女の赤い髪に軽く手を置いて谷村はその場を離れた。
凛生は谷村の言葉を聞きつつ、少しして訪れた睡魔に従い、目を閉じた。



講義はなんとか凌いだが、次の実技は少し心配があった。
しかし、動けないわけでもないので、凛生は体を叱咤する。

「・・・おい、流石にこれは休んだ方がいいんじゃないのか?」
「何をバカなことを・・・」
「バカ言ってんのはお前だろ。
 今の自分の顔、鏡で見たか?」

今にも死にそうなくらい青白いぞ、と付け足して谷村は実技に出る事を咎めた。
だが、凛生は断じて首を振らない。

「・・・大丈夫だっ!」
「のっ、石頭が!!」
「うるさいっ、今日は別の奴と組むからな!」
「勝手にしろ、倒れても知らねえからな!」

自分の頭をガシガシと乱暴に掻きながら、谷村は吐き捨てるように凛生に言って背を向けた。

凛生もそんな彼に背を向け、近くにいた生徒を捕まえて、構える。

だが、次の瞬間。
グラリ、と視界が歪んだ。

焦る様子を見せた組手の相手、遠巻きに視界には見えない谷村の焦った声が聞こえた気がした。


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