葛原ケ岡に消ゆる身の
□ふたりの風雲児
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牛車の前進が、捗らない。俊基らばかりでは、なかった。
市中を行き交う人々が、動けないでいる。何やら前方に、障害物があるらしい。
「助光。」
俊基が、声をかけるより一足速く、
「見て参りましょう。」
助光は俊基にそう告げて、駆け出して行った。
前方に、人垣が見える。
皆、一様に押し黙るか或いは、ひそひそ話しながら、何かを窺うように、爪先立ちしていた。
立ち往生する牛車が、そこかしこに見える。何を、畏れてか。見えぬ巨大な壁に、立ち塞がれたかのようだった。
かまわず、人垣をかき分ける。助光の鼻先に、香ばしい鰻の蒲焼きの匂いが漂ってきた。
腹が音をたてて鳴るのが、わかった。そういえば、飯を口にしていない。