葛原ケ岡に消ゆる身の
□天界にて
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助光は、悔しそうに呻き、発言を続けた。
「神の存在には、疑惑すら感じまする。…」
まだ若い陪審員が、たちまち苦々しい表情になる。
「助光、控えよ。」
「…前世の無常観を慮るに、神など居らぬに等しいのではないかと…。」
「控えよ、と申しておるのだ!」
「かような者が神ならば、なぜに、崇め奉る必要がございましょう?」
なおも止めぬ助光に、 鉄槌が下った。
「口を慎め!大神の御前に、あらせられるぞ!」
「存じ上げておりまする。」
助光の唇が、肩が、言うに言われぬ悲しみにうち震えた。
「存じ上げているからこその、この無礼…、何とぞ、ご容赦下さいませ。」
切々と訴え続ける彼に、圧倒されたのか。しばらくは、口を開く者とてなかった。
「そなたの、…無念の死を遂げた主に対する心根…。よう、わかった。」
大神が、声をかけた。一瞬、場内にどよめきが起こる。
「今ひと度、…あの者の魂を、この世に呼び戻したいのだな?」
ややあって、助光が答える。
「…はい。」