葛原ケ岡に消ゆる身の
□ふたりの風雲児
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まもなく、御所近くにさしかかろうとする頃。
人々の動きが、慌ただしくなった。通常とは明らかに違う、某かの雰囲気が漂っていた。
「悪党どもの、蜂起でございましょうか?」
助光が、事もなげに話しかける。
この時代の悪党は、50騎、100騎という集団で行動した。引馬(ひきうま)、唐櫃(からびつ)、弓箭(きゅうせん)を携え武装した姿は、照り輝くばかりであったと言われる。
それはまさに、婆娑羅(バサラ)の様態だった。
畿内近国における、悪党蜂起の頻発。常に、六波羅探題による悪党追捕のための、軍勢の催促動員。
都の人々も、そのような事態に麻痺していた。
悪党問題は、これほどまでに、社会の奥深くに浸透していたのである。