葛原ケ岡に消ゆる身の
□天界にて
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「…神の怒りを、買う事になってもか?」
改めて、裁判官は助光に尋ねた。
「…もとより、覚悟のうえにございます。」
「そは、神を冒涜する行為ぞ。」
言って聞かせるような、口調になる。しかし、相手の決意は固かった。
「ならば、お伺い致しまする。何ゆえに、神は、我が主の生命を奪い給うたので、ございましょう?」
「運命や寿命を変えるは、そなたの命とて、危うくなる…。」
助光に、相手の忠告は届かなかった。
「幕府は、…。」
「聴いておるか?助光。そなたの命に、関わる事ぞ。」
「幕府は、…権力を恣(ほしいまま)にした挙げ句、邪にも、私利私欲を貪り続けてまいりました。」
“時を逆行させるは、万死に値する。…”
裁判官の後ろで、白髭を蓄えた老人が、さも恐ろしげに呟いた。
“罰が当たらねば、よいが…。”
もう1人が、感慨深げに頷いている。
“まこと、正気の沙汰とは思えぬ…。”
「さらには、…一方的な処断のもと、我が主の命を無下に奪った。」