葛原ケ岡に消ゆる身の

□ふたりの風雲児
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今さらながら、助光は、腹を満たして来なかった事を、少々悔やんだ。

しかも、…。

弊害の正体は、武装した者どもだった。

眼前に列をなす関東武者が、我が物顔に歩んでいる。

馬に跨がった、数十名の武将はいるものの、皆、小具足(こぐそく)の出で立ちである。

小具足とは、直垂(ひたたれ)に籠手(こて)、臑当(すねあて)、脇楯(わいだて)だけを着用し、鎧を着けぬ姿の事だ。

八割がたは足軽の、何の事はない集団だった。


“違ったか… 。”


迷惑な、と舌打ちした時。


「…様じゃ!」


「控えよ、…様じゃ!」


何に気が付いたのか。周囲が、口々に騒ぎ始めた。
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