-Crystal of snow
□Voice
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「また?…」
壁に貼られた社報。
見慣れた名前が張り出されている。
【社長表彰 営業課 岩本照(いわもと ひかる)】
今年で何度目?
腹立つわぁ
同期の岩本照を妬む私は、彼の幼なじみ…
小中学校が同じで、高校と大学は違ったけど、家は隣だから、嫌でも顔を合わせていた。
そして、何故か同じ会社に就職…
なんなのこの腐れ縁。
小学生の時は、家族ぐるみで一緒に遊んでたけど、中学になってからは、お年頃と言うこともあり、避ける様になってた。
照は何でも出来る子。センスが良い。少し強面だけど顔は良い方だから、女子は黙ってない。でもって、面倒見が良いから、男子からも慕われてた。
私はと言えば、至って普通。成績も運動も平均
。なーんの取り柄も無い。
「同じ課じゃなくて、よかったわ…」
中学以来、ずっと遠ざかってたから、今更仲良く出来るわけもないし、この状態が安定してるから、変える気もない。
照も声掛けてこないし、知らないフリしてた方が、私には被害が無い…モテる人には近寄らない方が無難です。
「福山さん。この送金ってどうなってる?」
「それは、請求書に不備があったので、返却してますが?」
「マズイな…これ、指定日に入金しないと…」
確か、営業課の請求書だ。
「わかりました。返却先に確認します。」
「頼むね」
とりあえず、電話だな。
「経理の福山と申します。加藤さんはいらっしゃいますか?」
「加藤は外周りで、席を外してます。17時に戻る予定になってますが、折り返し電話させましょうか?」
「いえ、その頃伺うようにします。ありがとうございました。」
そう言って、電話を切る。
営業課に電話をすると、たまに出てくれる感じの良い人。声しか知らないけど、好きな声。