【バクシンバードとトレインのゲート】

□☆(疾)きまぐれのまぐれ
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 ちょっと当たりすぎた。
 三回に一回、、、いや五回に二回やや当たりが出れば上々、、、その程度の腕前と自分で理解しているバーディはさすがに不安になってきた。結果もネタも預かり知らぬ賭けなら、度胸とはったりでノリもするが、、、。
 スージーにはかわいそうだけど、これ以外は占い料を、、、、もちろん払えないような額を吹っ掛けて、、、もらうことにして煙に巻こう。思い立って、口を開きかけた時。

「あのっ、バーディさんを見込んでお願い!あたしとジミーの将来を占って下さいっ!」

「え、ええっ?」

 スージーの思い付きの方が一歩早かった。しかも大真面目である。
 かなりヤバイ。ここまで当てておいてしまってから、彼らの将来が「引き裂かれます」などと出てしまったら、、、。言えない。絶対そんなコト。
 とまどうバーディの様子に、ブルースが追い討ちをかける。

「どうだろうスージー、割り込んで悪いが、どうしても先に見てもらいたい事があるんだが」

 サングラスの奥、時によっては眠たげに見える目がキラリと子供っぽく光り、バーディはぐっと息を飲む。

「50惑星トライの結果を、ぜひ占ってもらいたいんだが」

「ご、、!、、ぶ、、、っ、、けっ、、け、けほ、、っ」

 口に運びかけた超薄めのスコッチを吹き出しかけ、盛大にむせるロック。

「ちょっ、ちょっと待てよブルース!ココで結果を見るってんなら、俺はトレインから下りるぜっ。もちろんゲームから下りるってことさ。くそ面白くねーじゃねえか」

「そ、そうよねっ、そんな難しい占いが自分で出来るなら、あたしだってトレインに乗る前にやってるわよ、、っ」

 スージー&ジミーの将来も見たくないが、トライの結果も見たくない。バーディはもう、会話の流れに任せて行き当たりばったりの逃げ腰である。

「難しい占いって言うのもあるんですか?」

「そうそう、色々なのよ。正確にはタロットカードがないとね。それにね、ジプシー占いって古いじゃない?カーメンの木星破壊があったから、やり方が確率された時代とは星の配置が違っちゃってるでしょ?もちろんその後何百年も研究され直したけど、まだまだって所が多いのよ。と、特に恋愛は微妙な事柄だからして、、、ねっ」

 言い訳の嵐。だが、ブルースも食い下がる。

「なら、もっとシンプルにいこう。この旅が終わった時、全員が五体満足で無事でいられるか。タロットなら私が持っているよ」

(ええーっ!!それも嫌〜〜!)

 言うが早いか、ブルースは席を立って自室へカードを取りに行ってしまった。
 仲間の誰かが死ぬ、、、なんて結果が出たらどうすればいいのだ。ひきつった笑顔で嘘をついたとしても、旅が終わるまで占いが外れてくれるようにと、、、心休まる時などないではないか。終わってからだって一生後悔しかねないではないか。


「あぁん、どおしよお。ね、ロックぅ、、どうしてもやんなきゃ駄目ぇ?」

 ブルースの持っているカードが何やら高級品だと聞いて、スージーはテーブルクロスを用意しに席を外した。その隙にこっそりロックに甘えた声を出す。


「なんだよ、そんなに自信ないわけ?」

「ないのよっ。ね、もし、最低な結果が出たら、あたし嘘つくから、、フォロー、、してくれる?」

「おいおい〜」

 オレンジのくるくる髪をくしゃっとつぶしてあきれ顔のロック。「あのサ」と、立てた人差し指をバーディの鼻先へチョンとやった。

「自信がないって事は、悪い結果が出ても外れる確率が高いってことだろ?なら、いいんじゃない?」

「そ、それは確かに、えー、でもなんかでたらめ〜」

 それでいいのかなんなのか、ますます頭を抱えこむ彼女を見て、フッとロックの口許が緩む。そしてすいと、内ポケットから銃を取りだし、2、3度それをさすりながら、、、意識的にロックは表情を引き締めた。

「フォローしてやるから、、、そのかわりホントの結果は教えろよ?レンアイならともかく、生死に関わるって事はつまり、俺の出番が強く影響するんだろうからな。もし、例えばビートが死ぬなんて出たら、、絶対に俺がビートを守ってやる。誰も死なせたりしないさ」

「ロックぅ、、」

 うるうる。そんな風に味方してくれるとは思ってもみなかった。

「占いとか運勢なんてよくわかんねーけど、今日は水色の服を着ましょうとか、アドバイス言うじゃん。結果をヒントにして良い方に運ぶわけだろ?死ぬって言われて素直に死ぬほど、ココの連中はマヌケじゃないって。な」

 ああ、そうだった。運を、ツキを呼ぶために、ステキな未来を手に入れるための、、占いはヒントなのだ。神秘とは縁の無さそうなロックに思い出させてもらうなんて。魔女の血を軽々しく見せびらかした罰、、だろうか。「ご先祖ごめんなさい」と唱えつつ、辺りをうかがってからロックの頬に軽くキス。

「ロックの方がずっと不思議で神秘的ね」

 やがてブルースとスージーが戻り、バーディはエキゾチックな柄のテーブルクロスを前に、クラシカルなデザインのカードを切る。
 その時は、、あたしがロックを守ってみせる、、、。けれどカードを捲ったその瞬間だけ、冷静に嘘がつけるだろうか、、、?新たな不安を抱えながら、テーブルの伏せられたカードを、、、、、、。

 ズシン!!

 横揺れに揺れた。エマージェンシーランプが赤く瞬き、警報が叫ぶ。

『ブルースさん!ブラディの手下だ!待ち伏せされたっっ!みんな上がって来て!』

 緊張に横槍を入れられたバーディはバクバク言う心臓を押さえて立ち上がった。カードは見事に散乱している。

 ロックに支えられたスージーと目で無事を確認しあい、操縦室へ急ごうとしたのだが、、、。

「スージー!上はいいからカードを集めてくれ!」

 ブルースの思わぬ指示が飛んだ。

「ルカ・タチバナ画伯デザインのプレミア物なんだっ」

「タチバナのカードですって?そんな数百万もするような美術品を扱わせてたのっ?!あ!手を清めるの忘れてた!」

 エスカレーターをすでに駆け上がり、部屋から出るばかりだったロックも、大理石の手摺から乗り出して怒鳴った。

「あんた、賭けの前金払って一文無しのはずじゃなかったのかよっ!」

「とにかくスージー!そういうわけだからカードを頼む!」

「はっハイッ!」





 ルカ・タチバナのカードは1枚だけ見つからずじまいであった。泣きそうなスージーを皆でかばい、そんな物を持ってるブルースが悪いとばかりに、他にも現金以外のお宝が有りそうな彼の部屋は、よってたかって鑑定団ごっこで荒らされた。







・・・・追記・・・・

 全員無事でグレート・タッチダウンのハッピーエンドを迎えた後の事。紛失したはずのカードは、バーディの部屋で発見された。







ーーーーend ー ーーー
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