J9 基地のゲート2
□Overflow ーThe second actー
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勝手知ったる秘密工場、中二階の通路で手すりにかじり付くようにして工場を見下ろしているボウイを発見。
俺が来たのは知ってるはずなのに、こっちから探し出すまで顔も見せない。ンの野郎、、ここに来るまでどんだけ深呼吸繰り返したと思ってやがんだ。
シンクロンの解除が利かない理由が不明のまま地球まで飛ばしてくるとか、ほんとバカ。お町もアイザックもすっとぼけた顔しやがって、何が「私用でレンタル」だ。ボウイを追いかける準備、できたてホヤホヤだったんじゃねえか。
「お前な!危ない橋は最低限にしとけよっ」
「渡りきったもんねー。無事だぜ?オ・レ・は」
わかってたって言うか、そんな気がしたって言うか、、それでも思ったよりくるモンあるな、、ボウイに歓迎されてないってのは。
「ずっと見てんのか?よく飽きないな」
「おやっさんにコントロールルームから追い出されたんでね。ま、飽きはしないけど、キッドさんが来てくれて良かったわ。子猫ちゃんと駆け落ちしたくなりはじめてたとこだ」
さ、、させるかよ、駆け落ちなんか。あっ違う、駆け落ちじゃない。それは持ち逃げだろうが。
「シンクロン装置とっぱらってさあ、、武装もぜんぶ無くしてみたらさあ、、あいつ、どんなコになるんだろうな、、」
くっそ、、、言いやがった。俺、必要ねえじゃねえかソレ。
「なんでこう、もっと上手に扱ってやれなかったかなー。こないだの天王星なんてほんとヒドかった。いや、、、もっとずっと、最初からさ」
確かに天王星は酷かった。魚のバケモノみたいなあのメカには随分食らっちまった。アイザックだって一段高いシートからヒラリとはいかずに、掴まりながら下りてきたしな。お町もしばらく突っ伏したままで俺たちを焦らせた。
あれでうちの愛機は調子が悪くなった。ボウイが俺を放置しだして、アイザックが眉間にしわ寄せて。おやっさんのスケジュールが空くまで、デカイ仕事はやめとこうって、言ってたところだった。ブライガーでの戦闘がなければ大丈夫だと、俺は思ってたんだけど、この騒ぎだ。
「あっ、、悪ぃ、愚痴聞かせちまったわ。流して流して?」
やっと少し、こっち向いたか。
「て、ゆーか、、キッドさん、もしかしなくても、心配してくれちゃった?」
「俺は、、、俺が、お前に用があって来た」
心配もしたし、腹も立ったし、愚痴だって一回くらいなら聞いてやるけど、俺は俺の用がある。
でもな、切り出しづらい。俺の用件を聞こうとしてるボウイのぽかんとした顔ったら、とてもじゃないがやっと見つけた本音の銘々式をやる雰囲気じゃない。どう言い出したらいいもんか。
「あのぉ、、どったの?キッドさん?俺ちゃんに用って、、」
「あー、、あ、ぃ、、!あのさ!で、、っ、デート!デートしようぜ」
「で、、、、はあっっ?!デート?、、って、デート?」
「そう、それ」
「いまさら????」
「ん、今更」
言い出しておいて勿論プランなんかない俺に呆れながら、ボウイはおやっさんから地元情報を聞き出してちゃっちゃと段取りを決めていく。
おやっさんがこっそりこっちを見て親指を立てた。そのつもりではあったけど、何が何でもボウイを連れ出せと、おやっさんからもプレッシャーかけられてたんだ。おやっさんもホッとしたろう。ボウイが居なくなりゃ機械に任せられる部分は任せて、他の仕事ができる。
使ってない機体があるから貸してやると言われ、ハンガーを覗く。埃をかぶっている単座の戦闘機は正規軍の二世代前のやつだ。どこかの超高級リゾートでシャトル便として話題になった球体ヘリもある。大小の宇宙艇から、無骨な建築用重機までごちゃまぜのハンガーの、奥から二番目にあったその機体は金属の地色むきだしの無愛想な、、試作機、かな。
ブライスターより一回り小振りでシートは六名ぶん。ちょっと狭苦しいコクピットで、俺たちは唸ってしまった。ただの移動用じゃなくて攻撃機なのはわかっていたが、、あまりにも馴染み深い配置の計器類、レーダーシートに、ブラスターシート。
「おい、、これ、、」
「ドッチだとしても、、おやっさんに任せとけばいい、そういうこった」
ドッチ?、、あっ!!、、そうか、てっきりブライスターを作った過程での試作機かと思ったが、逆の可能性もある。つまり発展型、新型のための試作って可能性。