J9 基地のゲート2
□Mark
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風に声
星に面影
あの日と同じ 月の光
いつかその指が
「キッドさーん、おっじゃまー」
上っ調子な声をあげて、夜半過ぎにキッドの部屋へ乗り込んでくる不埒者。
あと数分もすれば灯りを落とすスイッチに手が伸びる頃合いだったキッドは、ベッドで改めてぐだっと脱力して大きくため息をつく。それが煩わしさから来るものか、それとも安堵なのか、本人も突き詰めはしない。
嘘とシロップ
肌の傷
誓い 願い もがいた日々
いつかのあの瞳で
「おんや、まぁた人の知らないようなマニアックな曲聞いてんねー」
もっと早い時間ならいざ知らず、もはや口で言いはしてもご機嫌伺いなど無用とばかり、ボウイは真っ直ぐベッドにやって来て腰を下ろす。
歌い叫べ ひとり嵐に
躍り眠れ ひとり静かに
まだ脱力したままうつ伏せているキッドの首筋に、ちょんと軽くキスを落とした。
荒れ野の果て 光る小石が
星空の彼方 疼く翼が
いまはひとり
いまはひとり
いつか そして
のたりとキッドの腕が上がり、音楽を止めた。
「なーによ、べっつに止めなくたっていいじゃんよ。キッドさんの部屋なんだから、好きにして」
「俺の部屋だから、俺の好きに止める」
「今夜は、、ハズしちまったよーね?俺ちゃん戻るわ」
「一人で聴きたい曲もあるってことさ」
撤退のキスをしようと頬に触れてくるボウイの指をすっと避けて、キッドが寝返りを打つ。
狭いけれどそこに出来た一人分のスペースへ、ゆるっとした仕草で顎をしゃくるキッド。誘われて、ボウイが潜り込む。部屋に来た時のテンションはどこに畳み込んだのか、とても静かに。
「眠そうだけど、、、コッチは半分起きてんのね」
「お前の手、熱くて気持ちいい、、、。そうだ、、なあ、ひとつ注文。キスマークをさ、、、よーく場所選んで、、一個だけな。同じ場所に、、お前にもつけるから」
冷静な時になってから目に入るのが嫌だと、滅多に承知しないキッドからの思わぬオーダー。
「それは、、俺のものってサインを入れて良いって、意味?」
「少し、、違うな。しるしじゃなくて、目印、、かな。ターゲットだとヤバイな?」
「ここにぶっかけろ?!顔にマークしちまうぞ」
「やれるもんなら!」
たった1つの目印の場所。体の上で、迷って、迷って。
正確無比な腕。顔をうずめたくなる脇。綺麗なラインの鎖骨。心臓の位置。ゴツすぎない脇腹。時々憎たらしくなる背中。それから、足を開かせて。
いまはふたり、目印をつけて。野良になってもはぐれても、見つけ出せるように。
いつか そして
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