J9 基地のゲート2
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「待って、まじ待てって!俺ちゃんが遊ぶ分残しといてよ!」
「勝手にやれよ。俺はここから左回りで上に向かう。お前は格納庫からここまで上がって来ればいい。あ、、じゃあ、たくさん見つけた方が勝ちな!」
お楽しみポイントを自分で見つけたキッドは、ボウイが着替えて来るまで待ってやる程度には機嫌が直っている。作業中に重力が発生するととんでもない事になるので、三十分間は復旧させないようにメイにも連絡を入れた。
「そんじゃま、キッドさん」
廊下で向かい合いボウイが片手を差し出す。握手の要領でキッドが握り返すと、放送を通してメイがカウントをかけてくれた。ゼロと同時に手を引き合い、ぶつからぬように体をすれ違わせるとそれぞれ逆方向へスタートを切った。握った手を双方合わせての重心としなければこうすんなりとは飛べない。
そんな風に器用に始まったゲームだったが、残念ながらあっという間に頓挫した。ポヨンが置き去りにした物はほとんど格納庫に集中していたのだ。まるで獲物を見つけられないキッドはこのルールでは良いゲームにならない事を悟ったし、ボウイは獲物が多すぎて腕がもう一組必要だと悟った。
「最初からこーしてりゃ良かったわけね」
細かく噴射を繰り返し、ボウイがコズモワインダーを天井へ寄せていく。その肩に片手を置いて、キッドは後部シートに立ち上がった。ふわりと、ボウイの肩を押すとも言えないほど軽く押して反対の手を伸ばし、クレーンのランウェイから淡い緑色をした布製品を掴む。今度はランウェイの端を指で突いてボウイの後ろへ戻る。
「メイかお町か、髪の毛結ぶやつだな」
「布みたいなモン多いなぁ、ポヨンのやつ」
ハンカチ、タオルに、ウエス。今のところ一番の大物はお町の物と思われる薄手のストール。一ヶ所に溜め込んで寝床でも作るなら解らなくもないが、あちらにちょい、こちらにほい、、となると何を思ってそうするのかさっぱり解らない。それでも頭上にガラス食器など隠されるよりは、まあマシだ。
「次あそこな。白いの見えてる」
「はいよっ。さっすが、良い目してますな〜」
人の事をへらへらと誉めながら、自分もとばかり格納庫の反対側のランウェイへ急発進。キッドは自分が言い終わらぬうちから片手をボウイに回してしがみついている。もう片手はしっかりコズモワインダーのアームだ。噴射をかけるタイミングも心地よく、危なげない操縦にキッドが口笛を上げる。端から見れば悲鳴を上げかねないスピードだ。
もうずいぶん回収したが三十分では格納庫だけでいっぱいいっぱいのようだ。そのうちきちんと計画を立てて作業した方が良さそうだと思いつつ、キッドはランウェイの鋼材に引っ掛かっている白い紐のような物を引き出して、仰天した。
「ぶっ!」
どっと汗が吹き出る。
「どした?」
「、、ブラジャー、、」
「は、、ええーっっ?!どれどれ、見せて、見せて!」
「ば、、!おま!下ろせ!まず下ろせ!」
思わず空中でふらつくコズモワインダーをあわあわしながら着地させ、期待いっぱいのニヤケ面でボウイが振り返った時、キッドの表情はがちがちの真剣そのものに変わっていた。いぶかしんで瞬きをするボウイに、キッドが純白のブラジャーを手渡す。
「やばいぞ、ボウイ。これ、お町のじゃねえ」
バストのサイズに詳しくなくたってわかる。いくらなんでもわかる。この控え目な凸凹が、お町のサイズのはずはない。
渡されたボウイも口をかぱっと開けたまま固まった。キッドと二人でお町にぎゃーぎゃー言われて逃げ惑い、拾ったもんはしょーがないだろーっ、、なんて言い返す所まで想像しちゃってたのだ。無理だ。相手がメイではそれはありえない。頭の中をムリムリムリムリの群れが通り抜ける。てゆーか、してたんだ。あのコ、ブラしてたんだ。