J9 基地のゲート2
□Overflow
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AM 3:24、、、。
サイテーな状態で寝入っていた事に気づく。ボウイの手は俺の足の間に挟まっていたし、俺の手も目覚めた瞬間にふにゃっとボウイの一番柔らかい場所に触れた。要はお互いのナニを握ったまんまで寝ちまった、、と。
そっと、、そーっと、、ボウイの手を下ろして起き上がる。だるくて、眠くて、ここから立ち上がるのもかったるいけど、いったん起きたからにはシャワーを浴びずには気が済まない。
みみっちくだるさと戦いながら、ベッドに腰かけたまましばらくボウイを見ていた。明るいブラウンの髪があちらこちらに触れていった、ついさっきまでの肌の記憶をこそっと甦らせながら、ふと、コイツがここに寝ている事がとんでもない奇跡に思えた。
触りたい。髪から肩から撫で回して、俺の腕の中で眠らせておきたい。、、、愛しい、、?そうだな、これはきっと、、そういう感覚だ。
ボウイは別にドン引きなんてしていない。本人が目を開ける前からそう思う。最初からずっとそうしてた。ずっと居たんだ、ここに。
頭も尻尾もわからないくらい長く絡まった緊張が溶けてゆく。いつから緊張してたんだろう。アウトローになってから?最初に人を撃ってから?初めてブラスターを持ってから?
溶けて消えそうになってるそいつの尻尾を、俺は慎重に掴み直した。消えてなくなられちゃ困るんだ。溶けるんじゃない、解けろ。巻き取って編み直してやる。これから先もほどいては結び、解いては編み、つきあっていく。今はまだ、そう頑丈なロープワークはできなくても。
血塗れの手足の俺のエロースが、一瞬立ち止まり、振り向いたような気がした。いつか、、俺の手で編み上げた布で、その痛々しい裸体を隠してやりたい。そんな感覚。そうか、、俺は、、守ってやりたかったのか。、、、追い詰めて、酷い目に遇わせたいわけじゃ、、、、なかった、、、!!
ボウイが身じろぎして、すぐにぱっと目を開いた。
「、、っ、、ごめ、、」
「俺も、寝てた」
体を起こそうとしたのを押し戻すと、様子を伺うように指が重なってきた。さっきまでと別人みたいにおっかなびっくり。ボウイはトコトン俺に付き合おうとして相当コントロールしてた。してた、、はずなのに、イカれてる俺に引きずられていつもよりヒートアップしてるようでもあって。それを寝落ちするまで続けていたのだから、どんなドヤ顔されてもおかしくないのに、ドヤ顔とは正反対のおどおどした指。ほんの指先だけ絡めてやると、安心まるだしの顔が返ってきて改めて罪悪感が湧く。
「さすがに、、ビックリ。すごいたくさん、名前、呼んでくれてた」
お前のビックリはそこか?なんて突っ込みは無しだ。もっと他にもあるだろうに、やっぱりいつも通り笑ってら。
「の、割りに、、お前の事ぜんぜん構ってないし意識もしてなかった。一番サイテーだったろ?今までで」
「無意識でも、、俺のこと呼んでくれるんだ?あんなイイ声でさ。スゲー幸せ」
だめだ、、負ける。こんな甘ったるい関係が欲しくてコイツとこうなったつもりなんか、全然なかったはずなのに。
我慢できなくて手が伸びる。腰かけたままのへんな体勢でボウイに抱きついた。こんな姿を見たら、俺を知ってる奴みんなが呆気にとられるだろう。ジョニーはあの世で、、きっと爆笑しすぎて涙目だ。ロニーには、、いつか、言えるときもくるか、な。ちょっと拗ねながら、ほっとしたような顔を見せるだろう。
「キッド、、、、泣いてる?」
「ん、、問題ない。、、ひとつ、聞かせろよ。わかってる、って、さっき言ったの、どういう意味で?」
「あー、だから、アレだろ?あの変なブラスター野郎。んなイキナリ殺り合う羽目になったからさ、下半身に飛び火、したんだろーなって」
なんもわかってなさそうな顔だ?わかってねえのは俺の方だった。ボウイはわかってた。下半身に飛び火、、、まったく正確にわかってた。もうひとつ増えるどころか、とっくにバレてた。
返す言葉も見つからないまま、ようやく立ち上がる気になって洗面台まで戻って来れば、置き去りのブラスター。
「ボウイにバレてたとさ、俺とお前のカンケイ」
指先でちょいとつついて、やっと、ようやっっと、ほんとにシャワー。水音に誘われるみたいに、涙が溢れだす。恥ずかしくて悔しくて申し訳もなくて、、、けど、そんな事どうでもよくなるほど、抵抗できない安堵。
このままずっと、この先もずっとボウイと居たいと、そう出来たらいいと、初めて本気で思う。ボウイが望むからではなくて、応えてやりたいからではなくて、自分から。