J9 基地のゲート2

□Overflow
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 触れて、触れて、触れて。どこもかしこも。髪から爪先までぜんぶ明け渡すから。
 知った風な笑みを浮かべながら足を開いて見せる事もない。見せつけるように馬乗りになる事もない。ましてボウイを抱くのでもない。すべてボウイに任せて、ただ求めて、ひたすら受け取って、夢中で腰を揺らす。
 単純になりたい。気持ちいい状態に、、、それだけに流されて。ちょっとの間だけでいい。なにも考えなくていい時間を、考えられなくなるくらいの熱を、俺に。ルチアーノの死に様も、エヴァの涙も、さっきのヤツの血も、今だけ忘れたい。
 忘れるのは今だけだ。でも、ほんのちょっとラクになりたいがために、なりふり構わなくなってるみっともない俺の姿を、、、見られたい。
 そ、、か、、。見られたかったのか、俺。
 自覚したら、またカラダが熱くなる。目を閉じて、ただ与えられる熱い気配に甘えて溺れて、、、けど、、、、。
 されるままに煽られてカラダの方が興奮したらしたで、一旦忘れられたものが逆流を始める。ボウイに拭われた手の感触。仕事でもないのにやりあったさっきのヤツ。エヴァ、ルチアーノ、引き金を引いてしまったメイとシン。ジョニー、、、とうとうリッキーの顔までちらつく。そこから先がもやもやと霞がかかる。誰か、、、居たような気がする。居たはずな気がする。血塗れの白いからだが。
 いつまでも辿り着けないその白いからだをハンターのように追いかけながら、どうしようもなく欲情する。
 声を上げて、体をすりつけて、ボウイを見もしないで。
 カラダのやりとりに貪欲になる事にこれまで躊躇いはなかった。それはちゃんと、やりとり、だったから。こんな、ひとり勝手な欲だけ垂れ流すのは最低だってわかってたのに、わかってるのに、まだ止められない。

「す、、、っげ、、、、」

 余裕なんかない。楽しんでるとも言えない。自分の欲に引きずられるだけのSex 。こっちが本当の自分じゃないのかという嫌悪。
 それでも伝わるボウイの肌の熱と、注がれるエネルギー。こんなに一方通行でも俺に向かって流れる事をやめない力。それがわかる。これはボウイ。圧倒的にボウイ。それだけでも、わかっているってのは、俺には救い。
 頼むボウイ、、、今はまだ、ドン引きなんてしてくれるな、、、、もっと、、欲しい。







 
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