J9 基地のゲート2
□Open sesame
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「納得?」
「なんつーか、、ごめん、、?」
「いや、俺が、、フェアじゃなかった、、よな」
勘違いされてもおかしくないような振る舞いを、キッドが自分でしてきたのだ。ボウイに押さえ込まれ囲い込まれて、良いように扱われるのは嫌だった。カラダもキモチも。と言って、女の子のように大事に大事に可愛がられるのももっと気に入らない。ことさら、服を脱げば強気に拍車がかかった。
けれど他の相手にまでこの調子だと思われていたなら、しかも実際を大きく上回る人数を想像されていたなら、、、これは痛い、、、手痛い自業自得だ。
それを自覚出来る自分はまだいいが、只でさえ唯一の特別な相手として独占したがっているボウイを、全く無駄にやきもきさせていたのは素直に申し訳ないと思う。ボウイを煽るのは面白いが、不安まで煽る必要なんかない。
実際ボウイはなんだかまだスッキリしないでいる。いったん謝ってみたものの、今頃になって口を尖らせたくなってきた。これまでいったいどれだけ、キッドが不在の夜に気持ちを乱してきたことか。あの時も、あの夜も、ほとんどが空回りだったのだ。嬉しい事なはずなのに、素直にそれが出ない。
すいとベッドを下りたキッドが服を脱ぎ始める。一人で部屋に居るようにごく素っ気なく脱ぎ捨てていく。わざわざボウイの方を向きながら。
すべて脱ぎ去ると改めてベッドに片膝を乗り上げ、黙って観賞に徹していたボウイの手を取り、自分に引き寄せた。今夜三度目の、同じ仕草。
「こんなコト平気でしちゃうヤツを、なんと呼ぶでしょう?」
「大胆?」
「遠慮深いね、ボウイさん。お前が言うんなら、淫乱だろうがビッチだろうが認めるぜ。ソレが正解だし、正解はお前にしか見せてねえんだから、お前は言う権利ある。他ではせいぜい猫かぶってるんだぜ」
枕元にブラスターがある。それを最初から当たり前な事として、ボウイは気に留めもせずに受け入れた。それに気づいてからだったようにキッドは思う、自分がベッドの中で好き勝手に振る舞うようになったのは。
ボウイはしかし、そんなキッドの感慨も自省も知らぬげにそっけなく言った。
「へぇ、猫かぶれるんだ?器用だね」
キッドにしては熱の入った告白に、ボウイにしては見事な肩透かし。ぴしりとやられたキッドはボウイの手を解放して、足元のタオルケットを引寄せ、くるまった。
「キゲン直せよー」
「なんだ、やめちゃうの?ほっといたらどこまで一人でやって見せてくれんのかと思って待ってたのに」
「おいー、、珍しく切り替え悪いじゃんよ。素直に反省してぶっちゃけてんのにさ」
タオルケットの下から足先を出してボウイをちょいちょいと蹴る。
「なんか俺、キッドと付き合ってるとさ、、、、」
女の子が機嫌を損ねるポイントがだんだんわかってくるような気がしてコワイ、、、、、などとは言わぬが吉と、ボウイは慌てて口をストップさせた。
「付き合ってると何だよ?」
「なーんでーも、、、ねえっ!」
勢いよくキッドのタオルケットを引っ剥がし急襲をかける。勢いが余って壁を殴った手の甲がちょっと痛い。
「ボ、、ちょ、、脱げよっ、お前も脱げって、、!」
「もーいい、めんどい。待たせたねー?ドコ触って欲しいんだっけー?三回もさせちゃって悪かったねー?」
「俺だけ全裸かよっ、、なんか、、急に、、強引じゃねえ?」
「どこが?自称ビッチなキッドさんのお相手なら、これくらいぜんぜんでしょ」
「おま、、っ、、、変な方向に根に持つなよっ、、、」
「もー、、、うるさいよキッドさん。どうせわめくなら、、、」
「っつ、、あ、、、っ、、」
そんなこんなで、ボウイはちょっと強めに出てはみたが、いくつかの意地の悪い言葉と裏腹にふわりと優しく抱き締めて、、キッドを吹き出させた。
結局さいごには眠りつく間際までケラケラ笑いながら小突き合ったりしているのだった。
ただ、これを境に、機嫌を悪くすると以前より長引いたり、突発的に強引さを見せたりと、ちょっとばかり、、、、ボウイは我が儘になったのだった。
ついでながら、、キッドは別に前言撤回などしていない。まだやらかす可能性は残っているのである。
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