J9 基地のゲート2

□Open sesame
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「百戦錬磨って、、、それ、喧嘩絡みの油断って意味じゃなくて言ってんのか?」

 ボウイの言い方がちょっと気になったキッドもつられて起き上がる。

「だーって、そうでしょーよ?いっつも俺ばっかり煽られてるような気ぃするしさ、堂々を通り越して大胆ふてぶてしいってーかさ。その上、浮気認めろ、お前もしてこいってんだから、百戦錬磨でなくてなんなのよ?」

「、、、、お前ちょっとオーバーに考えすぎてねえか?」

「いんや、キッドさんが軽く考えすぎてんの」

 そこはボウイが正しい。正しいが、しかしやはりと、、キッドは頭を抱えた。

「参ったな、、」

 その件についてボウイも文句を言わないと承知した。したからには、と言うことだろう、いちいち詳細を問い詰めるような真似はボウイはしてこないが、その分、勘違いもかなり含まれているのではないかと、、キッドは初めて疑ってみた。自分は確かに誠実な恋人ではないが、ボウイはそれ以上に自分の事を、、つまり、とんでもなく浮気性のアソビ好きと思っているのではないか。訂正が必要なレベルで。

「あー、、あのな?実を言うと、、だな、、」

 浮気の言い訳じみた鈍くさい事態に焦る。うまい言い回しを探して口ごもっていると、パッとボウイが手のひらを向けた。

「待った!ちょい待ち。オーバーって言うなら俺が訊くわ。おっかなくて今まで訊けなかったけど、、、そもそも何人と寝た?J 区に来てから、でいいよ」

「エライぞ、ボウイちゃん。よく気がつきました。つまり、そーゆーコト。実のところ、お前入れても三人だぜ?」

「、、、、、ええーっっっ!!」

 案の定の激しい驚嘆である。

「、、どんなだと思われてたんだ俺は?よっぽどじゃなきゃしねーよ」

「まてまて、、俺ちゃん最初の一人、知ってるよな?アレだろ、ほんと最初の頃の。つうコトは、あと一人だけ???なんだよソレ、、、逆に気になるじゃんか!ソイツ、よっぽど、、だったって事?!」

「ちげ、、プロだ、プロ。好奇心というか、プロだとなんか違うのか、、とか。ついでにカラダのケアとか根掘り葉掘り」

 大胆と言えばそれも大胆な話だが、二人ともがそういった性癖の持ち主でない故に、その手の人脈は持たない。直接に生身の誰かに質問したくて金で解決した、という所だ。
 ボウイはただもう呆然である。いかに勝手な憶測で要らぬ心配をしていたか。恥ずかしいやら気が抜けたやら、混乱している。ばふっと、ベッドに転がれば、キッドもパタリと俯せて、そのまま手を伸ばしヘッドボードに置いてあったブラスターをそっと手に取った。

「なあ、考えてもみろよ。コレ」

 それはいつでもそこにある。どこで服を脱ぎ捨てようと、どの場所で我を忘れるような行為に耽ろうと、それはいつもキッドの手の届くどこかに必ずある。

「あ、、そうか、、」

 基地の中でボウイと体を交えていて、ブラスターが必要なことはない。最初それはボウイに見せるために置いてあった。日常的にそれが必要な生活を選んだ事をわからせるため。自分が抱いている相手がどんな人間かわからせるため。今はもう、そんな役目は終えた。単にそこにあった方がキッド自身が都合がいいので習慣としてそのままだ。
 では外では、その場かぎりの初めての相手ではどうか。ブラスターの必要性は格段に上がる。絶対と言っていいほど手元から離す訳にはいかない。だが、それを目の前に置かれたままで抱き合っても良いという相手など、そうそう居るものではないのだ。






 
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