J9 基地のゲート2

□Open sesame
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「ちょっとー、なんでこんな事されちゃってるの?!やっぱ見てよかったわー」

 約束通りボウイの部屋に送られた映像を、帰るなりさっそく見ている。とりあえずはついさっきの騒ぎから。
 例のカギ束男に対して、キッドは振り向き様に体が密着する勢いで接近してしまい、慌てて、、、自分が離れるのではなく相手を突き飛ばしてしまっていた。言葉での応酬をしているようだが、唐突にキッドがカギ束男を殴り倒す。どうやらキッドに有りがちな絡まれ方、をされたようだ。カギ束男が倒れて四人組のテーブルの上をダメにしたので本格的な乱闘が始まっている。
 ボウイが不平を漏らしたのは、体格の良い男にしっかり羽交い締めにされている場面だった。まだまるまる四人残っているのに、痩せぎすの男に正面から顎を持ち上げられている。

「お前、、こんな場面キタイしてたわけ?ただの覗き趣味かよ」

 ベッドに俯せて、ヘッドボードに組み込まれている画面をボウイは案外まじめな顔つきで見ている。

「んなことねーよ?喧嘩のセンスってーか、体の使い方とかさ、引いた所から見るのも面白いだろ?ほらほら、この切り抜け方〜!」

 自分で容れてきたコーヒーを立ち飲みしながら画面を覗き込んでいたキッドが、テーブルにカップを置いてからボウイの横に腰を下ろす。前はベッドから手の届く範囲に置いていたが、いつのまにかカップから手を離す、イコール服を脱がされる、という合図のようになってしまったのを嫌って、今はベッドに近づく前にカップを置いてくる。欲しいなら欲しい、気分じゃないなら、ないで、はっきり示したいキッドである。無言の仕草がいつもの合図だなんて、所帯臭くてごめんだった。

「リピートしやがるし」

 自分もベッドに転がって、肩で押してボウイを端に寄せる。シングルベッドは正直せまい。お互いに相手がセミダブルくらいに買い換えてくれないかと思っているが、言ったら負けだ。

「仕方ねえ、ひとつバラしてやるよ。あ、ここ、これっ!実を言うとだな、ボウイさん。この時がっつり掴まれちまってさぁ」

 キッドが一旦停止をさせたのは、先程の羽交い締めシーンだった。
 わからない様子でいるボウイの手首をつかんで引き寄せる。

「こーゆーことだよっ」

 そのまま自分の股間に押し当てた。

「わ、うそっ?」」

「お前が手ぇひっこめてどーすんだよ」

「いや、だって、ええーっ?」

 キッドの顎を捕らえているこの男の、見えていないもう片手はつまり、そういう事になっているらしい。画面とキッドの顔とを、ボウイの視線があたふた、じたばた、右往左往。

「お・ま・え・が、手を、引っ込めて、どーすんだよ?」

 もう一度。繰り返す言葉と動作。

「ココから、、手を離すなって、言ってんだ。なんだったら、、、いいぜ、画面見てても。手だけ貸せよ」

「おーお、ずいぶんと性急な。んなマネ出来るわけないじゃんよ。あっ!コイツに触られたせいかっ?!」

「んなワケ、、、、あー、、、」

 天井を見上げて心当たりのありげな苦笑いに、ボウイの渋い顔。

「油断し過ぎでしょー。百戦錬磨のキッドさんにしたらさ、こんなちょおっと握られたくらい、肩がぶつかったのと変わらんだろうに、煽られてるとか!」

 画面もオフにして、キッドの作った流れに乗っかるだけでよかったものを、ボウイはあっさり起き上がってベッドにあぐらをかいてしまった。





 
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