J9 基地のゲート2

□Rare and Hope
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 長い長い夢を見た。変に早寝しちまって、夜中に起きて、、そのあと寝直した時。



 目が覚めたら病院のベッドだった。すぐに、しまった!クラッシュやらかしたと、わかった。
 レースの結果は、マシンの損傷はと、クラッシュの前後を必死で思い出そうとしても、まるでわからない。
 衝撃で記憶がどうかしているのかと、今度はゆっくり、どこのどんなレースに参戦してるのだったかと考えても、これもはっきりしない。
 次から次へ、色んなサーキットの、色んコーナーを思い浮かべてみてもしっくりこない。それから、アスファルトのサーキットではない別のカテゴリーを、、山肌のダートコース、砂漠、氷雪のツンドラ、、あとは、、空と宇宙、、、月ー地球間往復?ル・マン・デ・ソウルの筈はないし、、、。


 そして唐突に気づく。これはクラッシュなんかじゃない、と。

 ザッと全身から血の気が失せて震えが走る。鼓動が、息が、早くなる。
 「やられた」んだ、俺たちは。とうとう、取り返しのつかないダメージを食らった。
 内側から冷たくなっていくような体を起こして、俺は病室を抜け出した。基地へ、、とにかくJ9 基地へ。体は動いたけど、手足にまるで力が入らなくて、もどかしさと戦いながら。
 けれど、辿り着いたいつもの場所に、J9 基地は存在してなかった。
 何もない、ただの隕石に膝をつき、座り込んだが最後、もう動けなかった。カモフラージュで隠れてるのか、基地ごと移動でもしちまったのか、、、、俺を置いて。
 それとも、最初からそんなものは無くて、やっぱり俺はレースでクラッシュしたんだろうか。
 自分のその考えにゾクッと鳥肌が立つ。長いこと座り込んでいた。しばらくして思いつく。
 メイとシンは?
 何がどうなっていようと、仕事でどんな失敗をしようと、本当にJ9 基地が無くなっていようと、二人にまで何かが起こるような事態は絶対に招かないはずだ。何処かに、、居るはずなんだ。
 なあ、そうだろう?
 二人を探せば何かがわかる。それを希望に俺は立ち上がった。
 気づけばそこはセントヘレンだった。手当たり次第にドアというドアを開けメイとシンを探す。かくれんぼでよく使った狭いスペースや、近所の公園、路地裏。
 俺はいつの間にか子供に戻っていて、二人を探しつつもセントヘレンでの日常を送らざるを得なかった。メイとシンを見つけなきゃならないのに、この街はおろか院から出ていくほどの金もない。
 ガンバって別の街の教会まで歩いて行って、そこに泊めてもらってそこからまた別の教会に、、そうやったら街から街へ探し歩けないかナア?
 体が子供になると行動も思考も子供並みだ。ポンチョやラスプーチンの事も思い出したが、どう連絡を付ければいいのか。全く手が届くとは思えなかった。
 必死になってここまできたが、あまりにも埒のあかない双子探しの日々に焦りが募り、とうとう、目をそらしていた「他のこと」が頭を過る。
 これ以上は、、、、無理か。もう、直視しなきゃダメなところまで来てしまったか。
 他の「誰か」が、どうなったのか。
 黒のしなやかな背を脳裏に描き、ずっと堪えていたものを叫びそうになったところで目が覚めた。


 ようやく、救われた。

「う、、へぇ、、リアルぅ、、、。つか、なげぇーっ、何ヵ月単位とかだろ今の」

 救われたんじゃない。何がなんでもそれを見たくないから、自分で自分を目覚めさせたんだ。逃げずにとことん見ちまった方がストレートなショックでかえってスッキリしたかもしれない。これまで何度も見てきた、本当のクラッシュする夢みたいに。

 今日は出来るだけ動き回った方が良い。運動って事ではなくて体を動かして、子猫ちゃんやコズモワインダーや色々チェック出来るものは全部やって、時間が余れば外へも出よう。昼寝はしないように、してもソファで15分以内だ。
 まだ5時台なのには参ったが、今はベッドから、誰もいないこの部屋から、出よう。

 キッチンでパンをかじっていると、カツン、コツンと足音をさせてアイザックが現れた。白一色の、それでもちょっと高いんだろうなと思わせるティーカップを持っている。

「おはよ。わざわざここまで持ってきて飲むの?」

「ああ、お早う。部屋のを切らしてしまって、、」

「そうだ、、。なあ、アイザック、メイとシンのさ、寝顔、、見たいんだけど、部屋に入ってもいいかな?いや、一人でンな事してたら変なヤツぽいからさ、一緒に来てよ」

「それはしかし、、、」

「わーってるよ、黙って部屋に入るのなんかこれで最初で最後にするから。あいつらガンガン成長すっからさ、まだちゃんと子供のうちに見ときたいんだよ。居眠りとかじゃなくて、ベッドで、普通に、ちゃーんと寝てるトコ。な?頼むよ、付いて来て」

 渋るアイザックをどうにか説き伏せて、まずはシンの、それからメイの寝顔を。
 もう、めちゃくちゃ大満足。
  あんなに探し回ったけど、二人ともちゃんとここに居る。気持ち良さそうな寝息をたてて。

 うん、悪くない。いい朝になった。





 





 
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