J9 基地のゲート1
□始末屋事始め4
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「んー。よくねたぁ」
えと、ここは。そう、ウエストJ区の私有小惑星NO.9。それにしても何年ぶりかしら。こんなに熟睡、いえ、これはもう爆睡ってゆうべきね。ホントおかしな連中。昨日初めてあったなんて信じらんない。
あたしはお町、エンジェルお町。裏の世界じゃちょっとは知られた有名人。依頼主とのビジネスが成立すれば、どんなトコでも爆弾仕掛けてくる、その道のプロ。
家出して、ガリレオ・コネクションに拾われて、みっちり仕込まれて。火薬のトリコ。でも、やんなっちゃったのよね、コネクション同士の抗争に駆り出されるのはいいけど、一般人にはちょっとね。で、フリーになった訳。でも誰かさんみたいに脱走してきたんじゃないのよ。きっちりオトシマエつけてきちゃったから。ま、ちょっと辛いこともしたけどね。
ピカイチの闇の情報人って噂のパンチョ・ポンチョとひょんなトコで出くわして、ついてきた、もとい、締め上げて連れて来させたのがこのJ9基地。まさかいきなりメンバーとして迎えられるとはね。あたし、忍び込んだのに。
ここは居心地最高!一晩で判るわ。連中とも気が合うし、主義もあう。ボウイのドライビングテク、キッドの百発百中の腕、アイザックの頭脳。もしかして、命、預けてもいいかも知れない。
ううん、あたしもうすっかりその気よ。
だけど、いいのかなぁ、キッドやボウイは直接アイザックに呼ばれてきたみたいだけど、あたしは違うもの。
「おはよ。メイちゃん」
「お、おはようございます。お町さん。あの、夕べはごめんなさい」
そうだった。夕べ彼女に睨まれたのよね、あたし。『キッチンの仕事はあたしがやります』って。
「あん、いいって。ちょっとした勘違いだもの、ね」
「はい」
うん、なかなか素直でいい子じゃない。言うことはきっちり言うし。まさかこんな物騒なトコに子供が住んでるとはねぇ。
でも、この子があたしの事、家政婦と勘違いするくらいだから、やっぱりあたしって予定外だったのね。
「すごい、メイちゃん、これ美味しい」
「ありがとう。あとで、好きなものや嫌いなもの教えてください。気をつけるから。それから、、よかったら誕生日も。ケーキ、作りたいから」
うーん、なぁんてあっとほおむなコトを。でもこの子に言われると、何か嬉しいな。
「人に誕生日気にしてもらうなんて、久しぶり。ありがと。ね、男どもは?見かけないようね」
「アイザックさんはもう起きてるわ。たぶんお部屋じゃないかしら。他の人達は、起こさないようにアイザックさんに言われてるから、、」
ふむ、なかなか気の回ること。いきなり結成、即、出撃って成り行きからして、朝イチでミーティングだのブリーフィングだのって、呼び出されるかと思ったんだけどな。カミソリの刃は付け替え自在ってわけね。そうこなくちゃ。
「あたし基地内案内します」
「そうね、お願いするわ。ああ、それならあの二人誘ってくるわね」
「はい。じゃシンも呼んできます」
「ゆっくりでいいわよ。連中夕べ、メインリビングで散々飲んでたもの。じゃ、一時間くらいしたら、センタールームから基地内探検に出発しましょ」
取りあえず、アイザックの部屋は素通りね。肝心な話があるけど、もうちょっと後にしましょ。あたし、あの二人に興味津々なのよねぇ。
あらやだ!ボウイちゃんたら、一人でメインリビングで雑魚寝しちゃったのぉ。うふふ♪いたずらしちゃえ。隣に寝そべって、と、こんなもんかな。
「ボウイ、ねえボウイー、、、愛してる、、、」
「ん、、ぁふ、、俺も、、愛して、、、なっ何ぃ?おま、お町!」
「ぷっ、いゃあだボウイちゃん。そうよ、あ・た・し。誰の夢見てたのぉ?」
「ひっでぇなー。もう、てっきりキッドが、、、あ、いや」
「なっ!なあに?あんたたちって、、、あっきれた、たった一晩で?」
「あーっもうさいてーっ。頼む!お願い、この通りっ。黙ってて、ね!あいつに殺されちまうよ俺」
「いいわよぉ。キッドには、知らない振りしててあげる。そ・の・か・わ・り・白状なさいナ。彼との進行状況は?」
「いや、まだ、、片思い、、、、ああっ、勘弁してよエンジェルぅ」
あはっ。かっわゆいの。この辺で許してやるか。
「ま、がんばってアタックしてみるのね。さて、バッチリ目は覚めたわよね、センタールームに来てくれる?」
「何?早速リーダーのお呼びなわけ?」
「じゃなくて、基地内の見学ツアーよ。ちゃんと来てね」
「OK!あ、お町っちゃん、ちょっと待って!俺ちゃんほんとは女の子が好きなんだかんね!ほんとよっ」
ああ、はいはい、わかりましたよ。しょうもないヤツ。
それで、その彼はどこかしらね。この部屋は空か。じゃこっちかな。あ、みぃつけたっと。なるほど、朝からシャワーですか。リビングで雑魚寝の誰かさんと一緒にされたくないって事カナ?
まあ、出てくるまで待ってましょ。あ、水の音が止んだ、、来る来る。
「はぁい♪キッドちゃん」
あっらま、すっぽんぽん。
「うわっ!お、おま、お町っ!」
「いゃあだ。今から隠したって、もうばっちり全部見ちゃったわよぉ。ブラスター・キッドともあろう人が随分と無防備なのねぇ。J9基地は安心できるって訳?」
「まあね、昨日までの逃亡生活からすりゃ天国さ。に、してもお町!シャワー室から出る前に声かけろよなっ。一体何しに来たのさっ」
「あら、ご挨拶だわね。女性にハダカ見られるのはお嫌?それとも男の方が好きなのかなっ」
「な、怒るぞ!、、、え、ひょっとして、俺の事さそって、、、る?」
あらあら、期待に目が輝いちゃって。かわいそうだけど。
「残念でした。メイとシンがここの中案内してくれるって。センタールームで待ってるわね」
まだ皆が来るまで間がありそうね。では、ホンノちょっと気を引き締めて、リーダーとお話ししましょうか。
「アイザック。入っていいかしら?」
「ああ、待っていたよ」
あら、嬉しそうな顔しちゃって。
「なあに?あたしに用があったの?」
「君の用件を先に聞こうか」
もう、てんでからかう余地なしなんだから。
「じゃあ、単刀直入に聞くけど、あたしメンバーとしてここに居ていいの?」
「君が居たければ」
「それじゃ話になんないわ。アイザック、このお町さんが気を遣って改まってるんですからね」
「わかっている。が、私の気持ちは今言った通りだ」
「じゃ、それじゃ、あたしを信用するって事?いいの、忍び込んだ人間よ。予定外だったんじゃなくて?」
「確かにハプニングだった。ここの守りには自信があったんだがな、しかし幸運なハプニングというものも存在するさ。正直、最低もう一人欲しかった。だが今この時を逃しては、キッドとボウイは手に入らなかっただろう」
「なるほどね。あなたの計算だと、人数の足りない無理な結成になるはずだった」
「その通り。だが君が現れた。ポンチョに目をつけ、まだ何の活動もしていないJ9を嗅ぎつけた嗅覚。ここへ乗り込んできた度胸。昨日の出撃時に見せたその腕」
やぁねえ、そんなまじめくさって誉めちぎんなくたって、、、照れちゃうわ。
「それに、、、こうして君の方から出向いて、話を切り出してくれた。これが最後の合格ラインさ」
あ、ヤダ、それであたしのこと待ってたのね。じゃ、さっき最初に見せた笑顔が、あたしに対する本心、、、なのね。ウン、なかなかいい顔だったわね。
「改めてお願いする。町子・ヴァレンシア、J9のメンバーになって欲しい。我々には君が必要だ」
「アイザック、、ええ、お受けするわ」
ああっ、これですっきりしたわ。晴れてお仲間ね。
「キッド、ボウイー!ここよ」
投げKissあげちゃえ。あははっ、二人とも真っ赤。
「ん?何でボウイまで赤くなってんだよ」
「そおゆうキッドさんこそナゼ?」
「あ、お前も何かされたクチ?」
「いっ?!キッドにもなんか悪戯したの?」
「お二人さん、ご名答!」
「こっのぉ、とんだエンジェルだぜ」
「ああっ、俺ちゃん先が思いやられるー」
「いやん、怒んないでぇ」
なんちゃってね。こんなモンじゃないわよぉ、あたしの悪戯は。
あたしはね、天使の羽と、悪魔の尻尾、両方もってんのよ。
ココってほんと、居心地最高!
よろしくね、チームメイト諸君♪♪
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