J9 基地のゲート1

□Colony ♪
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「ハナっから水割り〜?」

 言いながら、それでも勝手にチビチビ始めたボウイを見てて、今日に限ってどうして俺はこんなに下手に出てサービスしてるんだろうと不思議になる。それこそボウイの言う通り、スルーでもいいんじゃなかったろうか。俺は何がそんなに引っかかってボウイを引き止めているんだろう。
 三者面談でボウイは引っかかったんだろうけど、俺は、、、そう、三者面談だ。今一つ、、腑に落ちないんだ。ボウイが居たと言う施設の事、そこから出た時の事、ラーク社での、、、訊きもしないのにたくさんの事をよく喋るボウイが、三者面談でこんなに怒るなんて。
 冷たい声を残してバスルームへ消えたボウイ。黙って出かけたボウイ。呼び止めなきゃここに居ないはずのボウイ。つらつらと思い出してみる。
 そして今、嫌そうな顔も見せないが、黙ってただ飲んでるだけのボウイ。

「ボウイ、お前、俺の事避けてる?」

「え?なんで?」

 最初は面食らったような顔をしていたボウイが、すぐにキョロキョロと視線をさまよわせ、しまいにはうつむいてしまった。
 なんだよソレ。確信犯じゃねえのか。ていうか当たりかよ。

「あのー、、、俺ちゃん、今日、、かなり嫌な奴だったり、、、」

「した。かもな」

 赤くなって頭を抱えてるボウイを見て、やっと俺はまともにボウイと口をきいてる気がしてきた。

「要はさ、無理に起こされて機嫌が悪かっただけなんだよ」

「けど、怒ったのはやっぱり面談の事、、、なんだろ?」

「めんどうなんだぜ、実際。養子のあてはないのかとか、親類との連絡は、、なんてね。何人ぶんも三者面談するシスターの心労はわかってるからさ。まあ、アイザックの事だから、言い抜けの道は幾筋もあるし、それが口先だけじゃ無いように用意周到で臨んでるから、、俺が心配するほどでもないだろうけど」

 俺が知らないアイザックと双子のあれこれを、ボウイがかなり理解してる様子に驚いた。俺なんか、二人が怪我しないようにとか、、、そう、二人がここに居るのは、今までそうだったんだからそれでいい、くらいにしか考えていなかった。いや、わかっていたけど、アイザックの問題だからと、踏み込もうとはしなかった。

「まあ、そおゆうこと。とにかく二人の面談も終わったんだしさ、キッドさんがこんなに気にしてくれただけで俺ちゃんは幸せよ?」

 なんでだろう。今日一日、俺があれこれ考えた割には、ボウイはさらりと説明してシアワセなんて言ってる。
 そう言えば音楽のひとつもかけていなくて。ボウイがちょっと黙っただけで、ずいぶん静かな夜だ。心配してくれて幸せ、、なんて、女の子に言われたらちょっと感動ものかも知れないが、相手がボウイじゃどうもズレを感じてしまう。わざわざ「俺がボウイを幸せに」なんて考えてないんだから、、言ってみりゃタナボタで喜ばれても、、。水も釘も、、、今はささないけどさ。
 固まりきらないゆるいゼリーに浸かったみたい。ゆったりとかまったりとか言うのかも知れないが、そんなのは一人の時にやればいい。ボウイとそうしているのはつまらない。
 ヒョイと顔を上げると、ボウイも何か思い立ったように急に口を開いた。

「あのさ、外、、、行かない?」





 
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