J9 基地のゲート1
□そして続く君との時間
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「見て見て見て〜!キッドさんてば〜!」
インターホンを押して喋りながら、既にドアを開けて入ってくるボウイ。夜はともかく、昼間にキッドの部屋を訪ねる時はまるで頓着がない。
つい2、3日前に見た場面のデジャヴのような気がして、キッドがげんなりしているうちに、ボウイはバウンドしそうな勢いでベットに上がった。
「っだよ、騒々しいな!」
前回見させられたのは、久しぶりに掃除をしたら出てきたと言う、自分の下着だった事をキッドは思いだし、殴る心構えをしてからボウイの手元を覗きこむ。
「ん、、えっ?何だコレっ?基地の、、どの廊下だ?つか、いつだ?」
「びっくりだぜ?なんと、コレ初日!」
「うっわ、、、ほんとだ、、マジかよ、この、コート、、!」
「最初の頃さ、監視カメラ、フル稼働してたって、ダンナが言ってたじゃん?」
己で選んだとは言え、海とも山ともつかぬ自分たちをJ9 基地に招き入れた当初。現在はゲート近辺や外側など、侵入に対してのみ稼働している監視カメラも、あの頃はまだ内部に向けても警戒していたと、アイザックはずいぶん前に告白していた。
「消したんじゃなかったのか」
「ムービー自体はないんだ。たぶんメイがやったんだな。切り取った画像がいくつかね。コレとか、可愛くねえ?」
可愛いと言われて反論が出来ない。
「お、俺、、こんなに顔まるかったか?」
「それもそうだけどさ!こ、この視線!」
「るせっ!それ以上言うなよ?」
画像の中のキッドは、監視カメラに向かってガンを飛ばしているのだった。
覚えがある。ここに居つくかどうかも決めていない時だ。基地中の監視カメラが気障りで、チラッと見て舌打ちしたくらいのつもりだったのに、写された姿は完璧に喧嘩腰だ。姿かたち以上に、余裕のない幼さが恥ずかしい。
「ね、コレ、、覚えてる?」
「なっ?!なんだよコレ〜!どこの壁だ?」
壁に寄りかかり、軽く足を交差させているキッド。ほとんど覆い被さるように、ボウイが顔を覗き込んでいる。
「やっぱ、覚えてないか〜。俺ちゃん寂しー。キッドさんが、最初に使ってた部屋の前だよ」
「、、、、この後、、もしかして俺、殴った?」
「あはは!そうそう!思いだした?初殴り〜!」
殴られた事を喜ぶ馬鹿にあきれながら、馬鹿が喜ぶのを見て内心ニヤケるようになった自分も、相当馬鹿に近寄ってきているのをキッドは自覚しない訳にもいかなかった。
「1年半、、2年近く、、か」
「うん」
「お前も、最初っから、コイツいい体してやがんなって、、思ったけど、こうして見るとけっこうガキだったんだな」
「はは、キッドも体重ふえたのに、今の方が締まって見える」
「身長伸びたって言えよ」
「悪りぃ」
昼間から唇を重ねてもキッドも文句を言わない。外見ではない部分の、二人の変化を口移しで確かめ会って。
「信じらんないな、俺達、長続きしてるんじゃん」
「俺ちゃんは信じてるよ?もっと続くって」
「ばか。な、他にもないかメイに訊いてみろよ」
「お町が一人でコケてるのとか無いかな?」
「それイイ〜」
さっそくメイの所へ戻ったボウイは、サプライズプレゼント用にこっそり集めていた画像を持ち出した事を怒られた上、何の目的で資料室へ行ったのかと詰問までされた。
アイザックの言うべき事までしっかり言うようになったメイなのであった。
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