J9 基地のゲート1

□MATERIAL FRIENDS
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「んじゃ、もし、今スクールに行ってたら、、13、4くらいの奴とクラスメイトってことか」

「たぶん、そうかな。それにね、通信はやっぱりダメよ。シンと二人でいったい何時間、回線を開けっぱなしにするかと思うと怖くて、、。だって、ああいうのはトラブルが多いっていうし」

 仕事の入っていない時でも、できる限りは機械任せでない受信をと、暇を見ては通信室に入っているメイである。スクールの受講中に仕事用の通信をキャッチするには、どこかしら問題が発生するかもしれない。
 それ以前に、通信とはいえ趣味の講座ではなく公に認められたスクールなのだから、一定時間の拘束は避けられない、、、確かそんな制度だったと、、、。

(あ、ばっかでぇ、、俺もやってたんじゃん)

 J9 の仕事の為に度々エスケープのような状態になれば、成績は良くとも、退学になどなったら、、それは怖い。
「卒業できなきゃ走らせてあげない」と言ったオリビアのふくれ面を思い出した。

「アイザックさんに教わってれば、ぜーんぶ解決でしょ?どうしてもスクールに行ってみたくなったら、、シンと二人でエドモンさんの別荘に引っ越す事になると思うな、きっと」

 ドク・エドモンは大抵の時間を例の地下工場で過ごすが、そこはあくまでも工場であり、研究所である。彼は、そこからそう遠くないメキシコの海岸に、殺風景ではあるがかなり立派な家をきちんと持っている。本来そちらが家で工場は工場なのだが、メイのいう通り、家とは名ばかりの全く別荘扱いである。

「でも行かない」

 メイは、さっぱり、きっぱり、そう言った。

「ボウイさん達が夜中に戻って来ないって聞いただけで、こんなに心配なんですからねっ。ずっと離れたままなんて、、、わたし、毎日毎日なんにもしないで皆のこと考えてるわ。勉強なんて出来ない」

 夕べの夜遊びまで指摘されてとんだ薮蛇であるが、ボウイはもう、そんな事はどうでもよくなっている。当事者同士、つまりアイザックと二人の間では、とっくのとうに、恐らく自分がここへ来るよりずっと以前から、そんな話は通りがついているのだ。その上で今ここに居る。何を余計な事を言って不安がらせてしまったのか、、。

「うん、そうだよね。メイとシンが居なかったら、俺ちゃんも何も手につかないよ。うん、やっぱ考え直したりしないでさ、ちゃんとここに居て欲しいよ俺。それに実際いてくんなきゃ大変な事になっちまう。うーん、大変過ぎて四人で喧嘩でもおっぱじめるかもっ」

 脚立のてっぺんにちょこんと腰かけて、メイはすっかり安心して、おかしそうに笑う。

「けんか?やだぁ、それは嫌。もう、ボウイさんたら、、、でも、どうして急にスクールの事なんて言い出したの?」

「あ、いや、ほら、さっきこいつら相手に、、一人で話してたじゃん?なんとなーく、寂しかったり、しないかなって、、」

「ええっ?、、あれは、、、あれはだって、ボウイさんの癖がうつっちゃったのよ、絶対」

 あっさり言われてしまった。

「へ、俺?」

「だってボウイさんたら、本当に楽しそうにブライサンダーとお話しするんだもの」

「あ、、、」

 返す言葉がない。そもそも自分こそが機械を相手にお喋りしているではないか。今はもう、すっかり癖になり、意識するより先に口が開いてしまうが、思い返せばいつ頃からそんな癖をつけはじめたものか。車に触れるよりもっと前から、、、何か、返事をしない物にだけ、打ち明け話をしてはいなかったか。
 どこかに寂しげなものを引きずってそんな事をしていたのは、メイではなくて自分の方だったのだ。
 恥ずかしいやら、悔しいやら。メイの姿に、いつかの自分を重ねてしまったのだろうか。それを寂しいのかもしれないと、感じてしまったという事は、とりもなおさず、あの時自分が寂しかったと、、、認める事になるのだから。
 考えたくもないほうへ引っ張り込まれそうになる意識に闇雲に反発したくて、ぶんぶんと頭を振って抱え込んでしまう。

「どうしたの?」

「あ、あははははは、、、俺そんなに楽しそうにお話ししてる?子猫ちゃんと」

「うん!、、ボウイさん、、、楽しくないの、、?」

「ううん、ンなことない、楽しいっ」

 そう、楽しいのだ、今は。

「あーっ!姉ちゃん見つけたっっ!」

 当事者の片割れが、創庫の入り口で叫ぶ。続いてどやどやと。

「あ?ボウイ?!お前のせいか!メイが昼飯の時間を忘れるなんて、変だと思ったぜ」

「きゃ、お昼!どうしよう、、、あ、アイザックさんは?」

「あら、そういえば、さっきまで一緒だったわよね?」

 脚立から飛び降りて、メイがタタタタと走り出し、ボウイもキッドにすぱこーんと叩かれつつ、みんなと一緒にメイの後を追う。
 アイザックは一人ちゃっかりとキッチンで食事をしていた。

「あ!きったねえのっ。自分だけ何か作って食ってる!」

「ご、ごめんなさい、アイザックさん」

 大ポカで焦ってしまっているメイに、アイザックは別段怒りはしなかった。

「いいさ、たまには自分でインスタント作るのも」

「アイザック偉い!アンタは優しいっ。そう、たまにはいーよお、俺ちゃんたちがお仕事なくても、メイちゃんは働いてんだもんね」

 昼飯ナシの原因を作ったボウイは、見逃してなるかと調子に乗る。腹具合の優先的な彼のそんな台詞に、一同怪訝な顔であるが、言うことは最もなので遺憾とも反論しがたい。
 が、キッドは黙っていなかった。

「そうだな。メイの負担を軽くするのには賛成。昼は外で食うとして、、、晩メシはボウイが作るって言ってるぜ!」

「いっ?!、、、、いいですよ、やろうじゃないの!何でもいいんだなっ!」

 今夜のシェフは、自棄っぱちの18男に決まった。






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