J9 基地のゲート1

□ゆずれない
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 エドモン・バルチスが言うところの「がらくた置き場」は、俺達に言わせりゃ、非売品オンリーのおもちゃ箱で、面白い事この上ない。兵器ばかりでなく、量産出来ないアイディア商品的な物が山と積まれていて暇を潰すのはわけない。


 例のごとくボウイは何やかや言われておやっさんにとっ掴まったままなので、今日もやっぱり俺はこの第三倉庫で物色している。めぼしい物があっても、すぐおやっさんに言ったりしない。下手をすると法外な値段を吹っ掛けられかねないので、後からアイザックに交渉してもらうのがお得。

「なんだろこれ?」

 直径が10センチくらい、厚さが4センチくらいの金属製の円盤。ちょっと見には分厚いコースターのようだが、何かチップを入れるらしいヵ所と小さなボタンが幾つか、、。理解出来ない物をいじると何が起きるか知れたものじゃないのはとっくに経験済みなので、興味を持ったら素直に制作者に聞きにいく。
 メイン工場を見下ろせる中二階の通路に出て、下で直にブライサンダーを見ていたおやっさんに声を掛ける。そのまま通路の突き当たりにある操作室で待っていると程なくおやっさんが上がってきた。

「何だ、どうした?ああ、それか。それは役には立たんぞ、単なるインテリアだな。どら貸してみろ。この資料なら、、、お前さんに見せても損得なしじゃろ」

 いったいどう整理がついているかわからないような棚からマイクロチップを取り出すと、おやっさんは俺の引っ張り出してきた、がらくたにセットした。
 何のへんてつもない銀の円盤の上にポワッと、ブライカノンの立体構造図が浮かび上がった。

「へぇ、、立体ホロ、、って、、、、こんなに綺麗に映るもんだったっけ?」

 失言だった。これはこの人物が手掛けたオリジナルなればこその出来なのだ。やや透明感があるので、まさか本物と間違えたりはしないが、淡く発光しながら物凄くリアルなブライカノンがゆっくり回転する様子に思わず見とれてしまう。

「チップに落としさえすれば何だって好きな物を映せるぞ。プレートの上20センチに収まるように勝手に縮小する。簡単な文字もなんとかなるが、そうさな、文字は暗い場所の方が読み取りやすいか。何だ、気に入ったか?」

 つい顔が、欲しいと言っていたらしい。

「んー、、、、と、。あれ?ボウイは?」

「ああ、今な、、、」

 細かい商売の話より自慢の逸品が大事とばかり、おやっさんはもう俺の方など話し半分で、点検作業の続きに取り掛かりはじめた。すっかり職人の顔で、こんな時ばっかりはウルサイ親父でもカッコよく見えるから不思議。

「日用品の買い出しに行かせた所だ。町にさえ出りゃ足せる用だが、さて、西へ行ったか東へ行ったか。ボウズもたまにゃあだだっ広い地面を飛ばしたいだろうて」

「ンのやろ、一声かけりゃ俺も行ったのに」

 いつもの調子でそう言った俺に、作業の手を止めたおやっさんが呆れ顔で振り返っても、俺はその呆れ顔の意味するところがわからなかった。

「あのな、前から言おうと思っとったんだが、お前たちは年中その調子なのか?」

 、、、?、、、、

「そうやって金魚のフンみたいに始終くっついてるのかと言っとるのだ。いい大人がとは言わんがな。まるで14、5の小娘だぞ。双子よりくっついとる。それとも何か?二人で一人前な程のガキじゃあるまい?わしなんぞ見てみろ。ほとんど一年中ここで一人でおるんだ。たまに顔を見せた時くらい、片方はわしと居たっていいだろうが」

 なっ、、、、くっそー、言いたい事言いやがる。ほっといてくれ!くっついてたって、別にべったりなわけじゃない。、、、くそ、、説得力ないか。

「一人で寂しいからって俺達に当たる事ないだろっ。財産あるんだからさ、わかーい嫁さんでも貰っちまえば?そしたら俺達もここに来る楽しみが出来るってもんさ」

「よ、嫁だあ?このくそガキが、いらんお世話だ!暇ならコーヒーでも入れてこんかっ」

「俺が?!ったく、客にそんな事させてるから、いらんお世話も言いたくなるんだ」

「なーにが客だ、さっさといれてこい!」

 ああっ腹立つ!、、、でも結構うろたえちゃって、、心当たりの女でも居るのかな?

 コーヒーを入れに行く途中、通信室に寄ってボウイを呼び出してみた。、、、、、そうか、こんなだから言われちまうのか。けどなぁ、幾らなんでも、金魚のフンって程、、、自覚ねえなあ、俺は。

「よう、今どこ?」

『Yeah 、今ね、ガスパイプラインの遺跡伝いに、フェニックスの街を通り過ぎちゃったとこ』

「道じゃないとこ選んでんのか」

『あったり〜!この辺ならではよ、、って、あの、何か不機嫌?』

「別に」

『ツーソンの辺りで買い物済ませて、同じルートで帰るつもりだよ』

「おやっさんの車、壊すなよ」

『へーい』

 通信を終えて苦笑い。声を聞くと安心した。そーだよ、居ないより居る方がいいに決まってんだから、多少は金魚のフンだって構わないじゃないか。いつの間にか、生活の中でボウイの存在を確認し続けるのが当たり前になっている。しかも五感フル活用。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、え、触覚?うーん、、。あとは、、み、味覚か、、ボウイの味覚、、、ね。あはは、、、いいじゃんっ。どーせ昼間っからンなこと思い出しちゃうヤツだよ俺は。てってー的にこの五感、フル活用でボウイにぶつけてやるんだ。
 思考がむちゃくちゃになってく。ボウイの馬鹿が自分だけ楽しんでるからだ、と、人のセイにしておいて、それ以上思い出すのはやめた。

 
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