J9 基地のゲート1
□Lion Cry ♪
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うっすらと意識が戻りかける。なにがどうなった?あいつは?
倒れかかったままの姿勢で、起き上がるのが困難な程度に、まだ効いている。
そんなに時間は経ってない。確信出来るくらい、頭の方はさっきまでの記憶がすぐに繋がった。体も、、多少力が入りにくい程度だ。だんだん戻ってくる。
さっき車内で外したはずのヘルメットが、なぜか頭にある。あいつが外に出るために俺に被せたってことか。
即効性の、、どんな薬だったか知らないが、切れかけてて吐き気も何も無いというのは、、命拾いしたってことだろう。外傷もない。
あいつはドコ行った?
『二つだけ、否定する』
突然耳元でキッドの声がして、俺は凍りついた。なんで?早すぎる。
外しかけたヘルメットをそっと戻す。
『言い訳?』
音が近い。二人が向き合ってしまっているなら、あいつにわからないように、ここから抜け出さないと、キッドは八方塞がりだ。
伏せたままの姿勢でよくよく車内を確認して、、、俺はもう自分への怒りでドッと汗が出た。こんなに薬の切れが早いのに、縛られてもいないのは、俺がここから、よりによってこのブライサンダーから、出られないからだ。キーが無い。もちろん外からロック。
『俺はジョニーを殺してない。ジョニーは俺に恋なんてしてない』
なにいっ?
すっとんきょうに叫んでしまうのをぎりぎりで押さえた。
『都合のいい。どうして言い切れる!』
子猫ちゃんを壊してでも外へ出るべきだが、そんな道具は当然残されていない。俺に出来る事と言ったら、何か仕掛けられてないか確認するくらいだ。それも中からだけ。
『ずっと一緒に居た』
たじろがず即答するキッドが、その自信ありげな声と裏腹に痛々しい。
『でも居なくなった!あの人がどんなにあんたに憧れてたか、、』
『うっとおしい』
それは俺にだって衝撃の一言だ。やばいと思った瞬間には、二本のブラストラインが交差していた。
「キッド!」
聞こえているだろうに、見事に無視。倒れた相手に近づいて、キッドはもう一閃。たぶん、武器を片付けた。
『ジョニーの事でお前にとやかく言われる筋合いじゃない。でも、、俺の脱走でお前の人生が狂ったと言うなら、、、』
『いいや、、ちがう。たぶん、、』
俺は、、俺は一人でジョニー・サンデーに挨拶したかったんだ。とんちきな小僧め、、何をとち狂って、キッドに銃を向けたりした。おまえ、今さら何を言っても、、、遅いじゃないか、、、。
『たぶん、ジョニーだよ。あんたじゃ、、ない。ブラスターキッド、、憧れて、入隊、、、したんだった、、撃たれて、、思い出すなんて、ね』
あいつの声が段々遠くなる。
『じゃあ、、ジョニーは、、あんたに、撃たれ、、なかっ、、た?』
『ああ』
『なら、、おれの、、』
それきりあいつの声は聞こえなくなった。
しばらくそこに立っていたキッドは、、やがてゆっくりしゃがみこむと、、あいつの手を取り、、、、、ちっがーう!そんなんじゃなくて、あれは、、ブライサンダーのキーだっ。
「うわ、、」
く、来る。キーを握った拳を突き出して、ズカズカどかどかと。
「は、はい、、キッドさん」
途端にキッドは体を反らしたかと思うと、あろうことか、車体が揺れるほどブライサンダーを、蹴った。
「けっ、、蹴った!蹴りやがったなっ」