J9 基地のゲート1
□BROTHER
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部屋に戻ると、ボウイはソファーに寝転がって大あくびの様子。まだ自分の部屋にも、キッドの所にも行く気は無さそうな雰囲気。
「そこで構わなければ朝まで居ればいい。少し早いが私は寝るぞ」
毛布を一枚、放り投げる。
「んー、そうしよっかなー」
「明日辺り仕事が入る可能性がありそうなんだが、、お前らがそれじゃ怖くて出撃できんな」
眠気をすっ飛ばしてボウイがすっとんきょうな声をあげる。
「怖いぃ?!あんたがか?冗談よしてくれっ。んなコト言われちゃこっちが怖くなるぜ」
「冗談だ。が、そう思うならさっさとなんとかするんだな。あかり、落とすぞ」
冗談ごとではない。アイザックは半分は本気でそれが怖い。今回はたいした事もなさそうだから、軽く口に出して脅してみた。いざ仕事に入れば二人ともいつまでも馬鹿な事はしない。解っていても、なんとも嫌なものである。
「ヤダナーもう!人を脅かしておちょくるのは誰かと共通点だなっ」
「そうわめくな。もう寝ろ」
「、、有無を言わさぬトコもだ」
緊急コールもない静かな夜。キッドもこの程度では探し回りもしないだろう。明日の朝食前には元通りかもしれない。
ボウイのささやかな反撃を聞き流して寝返りを打った背に、もう一度ボウイが声をかける。
「なあ、アイザック。俺さ、、、アンタと、昆虫採集、、したかったよ」
ボウイはキッドに対してはそう感じた事はない。なぜだかアイザックには思う。子供の頃から一緒なら、、、、と。
アイザックも皮肉もからかいもせずに珍しく同調し、、白状した。
「、、家から出ようと決めた頃、、、本気で兄弟が欲しかった。母の傍に残ってくれそうな妹と、共に来ていずれ片腕になってくれそうな、弟」
「兄弟か、アンタの片腕にゃ役不足だが、ついて行くくらい出来た、かもナ。何なら明日から、兄ちゃんって呼んでやろうか」
「や、やめておけっ。今更そんな呼ばれかたされても気色が悪いだけだ」
「ごもっとも、、、。よしときましょうヤね。おやすみィっ」
自分で言った冗談を頭の中でイメージしてみて、恥ずかしいやら不気味やらでげんなりしてしまったボウイは、本気で眠ることに決めた。
「ああ、おやすみ、マイ リトル ブラザー」
「げ、、」
ボウイにとどめの一発を与えて、アイザックも後はひたすら眠ることを考えた。
二人とも、、、これ以後、二度とその冗談は口にしなかった。
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