短夜の夢

□大切な
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「…………………遅い」

町から出てしばらくジープと俊雷で走っていた三蔵一行。途中、昼休憩に入るために見晴らしのいい場所で止まっていた。
八戒は、他の三人を連れて近くの川へと水汲みに行ったのだが、なかなか帰って来ない。
三蔵は眠っている清蘭を抱きしめながら留守番をしていた。
しかし、なかなか帰って来ないためイライラし初めてきたのであった。

『…………スゥ……スゥ……』

ふと、自分の妹の顔を覗きこむと気持ち良さそうな顔で寝ている姿にイライラは少し減った気がした。

「……………マヌケヅラしやがって」

そんなことをつぶやきながら、清蘭のほっぺたを少し引っ張る三蔵。
ふと、思い出したのは昨夜の蜘蛛女との闘い時の彼女であった。
精神力を大量に使う【召喚術】、そして異空間に少しでもヒビを入れるために敵に攻撃を受けながらも解除していた清蘭。
もちろん、解放されても彼女の体力は残ってなかった。三蔵は、これ以上無理させてはいけないと思い、清蘭に休めと命令した。
だが、彼女は拒んだ。そして震える声でこう呟いたのであった

【足でまとい】になりたくないの……!!

三蔵は自分に似て頑固な妹をそっと抱きしめ、誰にも聞こえないように呟く。

「………清蘭、俺はお前のこと守れてるか??
…………お前は【足でまとい】になるのが嫌だとか言ってたが、お前だけはこれ以上傷つけたくないんだ
お前は俺とお師匠様の大事な………【守る者】なんだ………」

自分たちの育ての親、光明三蔵法師との約束、そしてその約束を守れず彼女のココロに酷い傷を残してしまったことを思い出していた。
だから、もうこれ以上に傷つけたくないんだと思っての言葉だったのに、清蘭は拒んだ。
これからも彼女に血を浴びさせて行けばいいのかと、また悩み始めた。

『ん……………』

すると、腕の中の清蘭が身じろぎし始めた
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