短夜の夢

□言葉
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≪俺が信じているのは、自分自身と清蘭,
お前だけだ≫

三日前に言われたあの言葉がまだ頭の中をグルグルとまわっている。自分の兄の用心深い性格はよく理解している。けど、真正面であんなことを言われて正直困る。自分は兄にとってやはり【重荷】なのかと・・・

『・・・なーに、言ってるんだか』

今日の野宿は、近くに河が流れていたので先ほどまで水浴びをしていた清蘭は、着替えながら本日何度目かのため息とともに呟く。
その呟きは向こうの茂みで見張り役の悟浄に聞こえていたのかとぼけた声で清蘭に声をかける。

「どったの、清蘭ちゃん??」

『うーんうーん、なーんにもないよー』

悟浄の心配はありがたいが、これは自分と兄の問題だ。姉弟仲がいい(本人たちは否定するが)悟浄と朱麗にはありえないことだと、そう清蘭は自分に言い聞かせつつ、結局悟浄に聞き出す。

『ねえ、悟浄ー、朱麗がさ、悟浄のことしか信じていないって宣言されたらどーする??』

「いきなりですね、質問が・・・」

いきなりの質問に苦笑交じりで答えたが、けど考えているのか暫し静寂が流れた。
そして、出てきた答えはというと・・・

「俺だったら、ぶん殴る、な」

『・・・・マジで??』

「マジで」

一応確認してみるが、即答だったので口を閉じる。
でも、殴るのはそれは姉のことを思ってのことまのだろう。悟浄らしいやり方に少し笑みを浮かべてしまう。
すると、清蘭のそんな胸の内に気付いたのか悟浄はおもむろに声をかける。

「まあ、あのシスコンボーズがなーに考えてんのか俺はしっちゃことではねーが清蘭ちゃんはあいつのことどんな時でも信じてやれよ」

悟浄のまさかのお言葉に一瞬唖然とするが、その意味をすぐ気付く。

自分は兄を信じていけば良いんだと

清蘭は着替え終わり、悟浄の側に行く。そして、自分とは正反対の紅髪を撫で笑顔で言う。

『・・・ありがとう、悟浄』

色々な思いを込めたその言葉に悟浄は微笑み手を差し伸べる。清蘭はためらいもなくその手をとり、彼を引っ張り立たせた。
向こうの方から今日の夕飯の匂いがしてきた。
そろそろ行かないと悟空が、五月蠅く喚きだすだろう。
お互いそれが分かっているのか、そのまま匂いの方向へと歩き出した。



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