その他

□効かない
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昔からずっと、吸血鬼というのは人間から嫌われ、排除されるものだった。
だが、俺はそんな化け物に恋をした。

目の前にいる、ぐったりと木にもたれている吸血鬼は、いつも以上に顔を白くしていた。
「…臨也」
吸血鬼の名を呼ぶと、うつむいていた顔をゆっくりと俺の方へ向けた。
「なぁに、シズちゃん。早く、殺さないの」
生気のない顔にうっすらと笑みを貼り付け、挑発するような声で言い放った。
「手前が、俺に生かして欲しいって言うまで生かさねぇし、殺さねぇ。」
「あはっ…何それ、遂に狂ったの」
血を大量にぶちまけときながら、こんなこと言えるって事は、やはりコイツが化け物って事を証明していた。
それでもやはり苦しいのか、うっすらと汗を滲ませ、荒く息をしていた。
「……俺、教育方法間違ったのかなぁ」
はあ、と大袈裟に溜め息を吐き、そんなことを呟いた。
「いいや?そこらの家庭より良い教育してたぜ」
「じゃあ、なんで君は興奮してるのさ」
臨也に指摘されるまで自分でも気づかなかった。自分の頬に手を当てると、熱くなっていて、息も荒くなっていた。
まあ、目の前で好きな人が弱っていたら、男だったら誰でも興奮するだろう。
…弱ってる、というよりは死にかけている、だが。

「はあはあ言ってる手前がエロいからに決まってるだろぉが」
赤く染まっている、元々白かった手袋を外し、頬を撫で上げるとまた、わざとらしく溜め息を吐いた。
「……そんな子に、育てた覚え、ないんだけどなあ。」
先程から、まるで自分の子供のように言っているが、俺は5歳のとき、こいつに引き取られて16歳まで、こいつに育てられた。

元々、普通の家庭で普通に暮らしていたのだがある日、俺の住んでいた村が悪魔や魔物で滅んでしまった。俺はその時、両親に逃がしてもらい、森の中を全力で走っていた。日が暮れて、周りが見えない程暗くなっても、走り続けた。
逃げないと、悪魔に、殺される。
その思いでいっぱいだった。
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いつか続きかきます。
いちおーこの世界は普通は距離おいてるけれど、悪魔とか魔物とか妖精とか、とりあえず人外達がいる設定です。

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