その他

□甘い君
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それは、ある日の事だった。
職員室に渡されたものを置きに行き、今日は部活も無かったので早く帰って読みかけの本を読みたいと思っていた。
駆け足に教室の前までくると、中から下品な笑い声が聞こえた。
なんなのだろう、と好奇心が疼いてそっとドアの隙間から覗いてみると、男子達が円になって机を囲んでいた。机の上には何があるのか見ようと思ったが、丁度正面に立っている男子が邪魔になって、見えない。そして、誰かがページを捲る音がした。すると、また笑い声を上げる者、顔を赤くする者、それをじっくりと眺める者で分かれた。ああ、そういう事か。ここには年頃の男ばかりだ。自分も興味が無いというわけでは無い。ただ、これから女では抜けないと思う。大笑いしていた者が、ふと笑いを止め本をまじまじと見ると、にやりと笑った。
「おい、これ、ディオに似ていないか?」
…なに、ディオ、だと?何故そこでディオの名がでたのだ。ディオはれっきとした男であり、僕の愛しき恋人なのだ。
嫉妬と疑問がぐるぐると頭の中をかき混ぜる。考えこんでいると、聞きなれた愛しい恋人のこえが聞こえた。
「はは、冗談はよせよ。俺はこんな淫乱じゃあないぞ?」
ころころと鈴が鳴るような可愛らしい声で返事を返すと、その声は汚い笑い声で埋めつくされた。
「でも、俺はディオだったらイけるかも!」
「俺も俺も。ディオって女みてーに白いしな。」
「目ぇつぶってならイけるわ。」
ふざけるなふざけるなふざけるな!!
僕がお前達みたいな獣に渡すわけないだろう。ディオは僕だけのものなんだ。僕だけの。カタリ、とドアを開けた。獣達が一斉に此方へ向く。ディオはびくり、と体を揺らして、震えていた。ああ、怖かったんだね。今すぐ、こんな所から出ようね。
獣達は、女子か教師だと思っていたのかふぅ、と安心したような顔をした。ふざけるな、先程までディオを怯えさせてたくせに。
「な、なんだよ、ジョジョか。いきなり開けるなよ!」
獣がこちらへ来て、馴れ馴れしく僕の肩に腕を置いてくる。ああ、帰ったら綺麗に洗わなければ。
「そうかい?僕はいつも通り、開けたつもりだったんだけどなあ。」
出来るだけ、いつも通りのまわりが言うほんわかした声を出す。そして、奥にいるディオに近ずいて、そっと白くて僕よりは小さい手をとる。
「さあ、ディオ、そろそろ帰えろっか。」
「あ…ああ、そう、だな…」
僕に声を掛けられて、またびくりと大きく体を揺らして、かたかたと震えながら、返事を返した。そんなにここが怖かったんだね。すぐ、帰ろう。
数人に、ディオの怯え様に、怪しんでいたが、何事もなかったようにじゃあな、と手を振っていた。
ふざけるな。お前達がディオを怯えさせているくせに、謝ることもしないのか。
怒りと安心させるために、肩にそっと手を置くと、ディオはまたびくり、と大きく揺れた。
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最初はヤって食べるとか言ってけど結局普通になってしまった…。

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