短編

□サッチと出会う
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「…………増えた」

「……なんだよあんた」

「ごんべだよい!!!」

今何が起きたのか、冷静に整理しよう。

そうだ、俺は仕事が休みだからゆっくり寝てたんだ。

大きな落下音がしたから慌てて目を覚まして、体を起こそうとしたら胸に何か塊が飛び込んで来たから奇声と共に受け止めた。

なんだなんだと飛び込んで来たモノを見るとそこには金のふわふわな髪を揺らした(俺の)天使がいたんだ。

そう、ヒヨコちゃんがいたのだ。

自分の世界に帰った筈のヒヨコちゃんと約2年ぶりに再び再会出来てうっはうはになり抱き上げたり、ギュウギュウと抱きしめ何をしていたのかとか成長した様子に嬉しくて舞い上がっていると、第三者の声が割り込んで来た。

「おいまるこ!!」

「なんだよい」

「そいつ誰だよ!それに、ここは!?」

捲し立てるのは小さなマルコと同じく小さな少年。

恐らく彼もマルコの世界の住人だろう。

「前に言っただろ!!ごんべだよい!!」

「ごんべって…夢の話じゃないのかよ!!」

「夢じゃないって言っただろ!!」

抱きつきながら言い合いをするマルコにそろそろ耳がヤバイ。

「ま、マルコ、その少年は?」

頭を撫でながら尋ねると、マルコは振り返って笑った。

「さっちだよい!」

「サッチ君?」

「よい!!」

ニコニコ笑うマルコとは正反対で、サッチという名の少年は険しい表情でごんべを見る。

「えっと、初めましてサッチ君。俺は名無しのごんべ。ごんべでいいよ」

「………おう」

一言それだけ答えたサッチ。

茶色い髪の毛を弄りながらきょろきょろと辺りを見渡すその姿はどこか緊張しているようにも見えた。

そんなサッチを余所にはしゃぐマルコに苦笑すると頭を撫でた。

「マルコ、落ち着いて。サッチ君が戸惑ってるだろ?ここで知ってる人はマルコだけなんだから、色々教えてあげないと」

「…!!よい!!」

そうだ!とごんべの言葉に頷き、サッチに近寄ると以前自分がしてもらったようにテレビ等の説明をしていく。

その説明を一生懸命聞くサッチはやはり不安な気持ちが強かったのだろう、ぎゅっとマルコの服を掴んでいた。

(………天使が二人)


日々の疲れが癒されていく。

ほわほわとした2人を微笑みながら見守っていると、視線に気付いたサッチが訝しげに此方を見た。

「なんだよ」

「癒されるな〜って」

質問に素直に答えたのに、サッチは訳が分からないと首を振った。

随分ひねくれてるな〜とサッチを見ていると、グーっと音がした。

「………よい」

恥ずかしそうにお腹を抑えるマルコに思わず吹き出し、ご飯を作ることにした。






簡単に料理を作り、テーブルへ並べる。

朝食なので全体的に軽めのものを作った。

自分にはコーヒー、チビちゃん二人にはココアを用意してやる。

「さあ、お食べ」

「食べる?………いいのか?」

「もちろん」

にっこり笑ってやるとサッチは視線をきょろきょろと泳がせた後、ゆっくりと食事に手をつけた。

一口食べた後、パクパクと食べ出す様子に微笑んで自分も食事に手をつける。

(これから楽しくなりそうだな…)

なんて、少し警戒を解いた様子のサッチに、もう一度微笑んだ。






END



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