花になれっ!
□花が笑む頃
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「え、代役、ですか、…?」
花音くんに半ば強引に連れて来られた場所は。
先程通りかかった、ロケ現場で。
「頼むよ。髪の長さも似てるし、何よりこんな美人さんなら問題ないからね!休み時間になる前に撮っちゃおう、」
「っ、でも、」
「後ろ姿だけだから大丈夫だって。どうしても必要なシーンなんだ、名無しさん、?」
「っ、……」
花音くんに耳元で囁かれると、何故か無性に体が熱くなる。
(こんなこと、)
滅多にないのに。
花音くんの香りに、縛られる。
「これに着替えて、ほんの数分だから、」
「………花音、くん、」
こんなことしてる場合じゃないけど。
じーっと見つめられてしまえば、断るに断りきれなくて。
(後ろ姿だけ、なら、)
きっと目立たない、よね。
数分ならきっと、大丈夫、なはず。
不安要素は沢山あったけれど、流されるままにワンピースを受け取った。
花が笑む頃