花になれっ!
□花が笑む頃
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「うん、今はももと一緒に住んでるよ、若王子さんちにお邪魔させてもらってるんだけどね、」
庭の花たちに水をやりながら、大切な人に電話する。
色とりどりの花たちは、私に微笑みかけてくれて。
優しくキスを落とせば、艶やかに香りを放った。
花が笑む頃
「大丈夫だって、今のとこされてないし、…それが条件だったし、ね、」
どんなに離れていても。
やっぱり、家族のように育った人と話をするのは心地よくて。
少しだけ張っていた気持ちが緩む。
「まだ帰りませんー、まだ一週間じゃない、もう、…」
覚悟をしてここまで来たとはいえ、やっぱりどこか緊張していて。
受け入れられないんじゃないか、とか。
拒絶されるんじゃないか、とか。
16年、いなかったのになんで今更、とか。
そういうことを言われてしまうことだって、ちゃんと頭に置いていた。
幸い、ももはとってもいい子で。
まっすぐに育っていてくれたからよかったけど。
そんな不安からきた緊張が、プラチナの声を聞いただけで、ゆるゆると抜けていく。
「仲良くなれそうだよ、ていうかもも、可愛すぎなのっ!」
ただ、純粋に嬉しかった。
ももが、私を受け入れてくれたこと。
私を、認めてくれたこと。
「うん、……うん、プラチナも元気でね、また電話する。」
電話を切り、家の中へと戻る。
この環境が、大好きだ。
この場所が、大好きだ。
この場所を守るために。
この場所を、崩さないために。
私は、ももの幸せを、ただ、願う。
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