ひかりのおはなし 及川
□●めひらくひかり H
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[遥視点]
戸が閉まり、部屋を離れていく足音。
「及川くんってコいいこだね」
「え?」
血圧など計りながら香川さんが話し出す。
香川さんは、私が入院しているときから担当してくれていて、良くしてもらっている。
「あとで、しっかりお礼言っておきなさいよ。
戸隠さんのご両親が出張で、いらっしゃれないからって、ずっと側にいてくれたんだから」
…手の温もりを思い出す。
寝てる間も心があたたかだった。
「退院して学校にもどったら、あんなイケメン君見つけてくるなんて、戸隠さんも隅に置けないね」
「わ!私と及川くんは…別にそんな…」
「ふふ。そうなの?
戸隠さんが運び込まれてきた時、及川くんの方が大変な位慌ててて。
《遥ちゃんを助けてください》って。
あ、これ、戸隠さんに云ったこと及川くんには内緒ね」
「ほんとに、及川くんとは、何も無いですから」
「及川くんの方はどうだろうね」
「もう!香川さんったら」
気さくな方でおもしろくて、入院中暗くならないようにしてくれて。
今日も気にかけて、こんな事を言ってくれてるんだと思う。
「きちんと、感謝は伝えますから」
しばらくして、主治医の先生も来てくださり、検査の案内などを受けた。
コンコン
「あ、帰ってきたんじゃない?
どうぞ」
「失礼します」
「もうしばらくは居てもらって大丈夫ですから。
また2時間後に来ますね。
でわ、おじゃま虫は退散します」
「か、香川さん!」
香川さんは病室から出て行って、
及川くんと私の二人きりになった。