ひかりのおはなし 及川

□●ひかりあやうし? F
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スーパーまでの5分くらいの間、話しながら歩いたけど、

これってデート!?

とか思ってみたり。
二人ともジャージだけど、こうやって、校外で歩くのは初めて。
何だか新鮮。

スーパーの話をする遥ちゃんの目は輝いていて、(ちょっとなに言ってるか分からない時もあったけど)そんな顔を見るのも幸せ〜。


「さぁ、スーパーに着きましたよ!」


台車は預かってもらい、カートに手をかけた姿は、闘志にみなぎっていた。


「遥ちゃん。荷物は任せて?品物を選ぶのは、俺詳しくないからお任せするね」

「かしこまりました。でも、カート1つじゃ足りないかもなので、2人で行きますよ」


ポケットからチラシを取り出し、目は獲物をねらうかのような…。

こんな遥ちゃん見たこと無い…

今日は特売日なんです。このスーパーはこの時間からタイムセールを行っていて、ねらい時なんです。
今日の献立は…

つらつらつらといつもの遥ちゃんとは思えないほど饒舌で、メモを見ながら個数を確認し次から次へとカゴに入れていく。

野菜、肉、魚、飲料水、調味料。

カランカランとドコからかベルのなる音。

キランと遥ちゃんの目が光り、音の鳴る方に瞬時に向かう。


『タイムサービスだよ!お一人様2つまで!』

「待ってました!及川くんもとって!2つ!」

「は、はい!」


おばさま達がひしめく中何とか手に入れられた。
パッケージを見ると


「やっす」

「でしょ?」


横を見ると、まんべんの笑みの遥ちゃん。ドヤ顔かも。

この後、あと二回タイムサービスがあって、とても安く手に入った。



****************


「ふわぁ…幸せ…予算内で十分買えた…」

「すごい量だね。台車でホント良かった」

「ありがとう!及か…わく…」


いつもの儚げな笑顔ではなく、まさに元気いっぱいっていうひまわりのような笑顔でコチラをみた。

が、みるみる赤くなって、しまった…という顔になっていった。


「ご、ごめんなさい…!
私、スーパー好きで、
よく家族の分買い物に行ってて、
久々で…
興奮しちゃって…
及川さんを使うようなことしちゃって…」


あぁ…何てことを…と両手で顔を覆った。


「うん。俺のこと
及川クンって君呼びしてくれたし」

「あぁ…」

「タメ口してくれたし」

「忘れてください…。本当に申し訳ありません。
バレー部主将に、男の子に何て事をさせてしまったのでしょう…」


座り込んで泣き出しそうな勢いでうなだれている。


「嬉しかったけどなぁー。普段の遥ちゃんが見えたみたいで」

「おばさんみたいでホント恥ずかしいです。皆には内緒にしてください!」


涙目で訴えてくるその顔、かなりそそられるんですケド。
ほんとにイヤなんだなー。
イジメたくなっちゃうなぁー。


「わかりました。内緒だネ。
でも、条件付き」


ちょっと驚いた顔してコクンと小さくうなづく。


「俺のことを、及川さんじゃなくって、
クン付けか、名前で呼んで欲しいなぁー」


顔を真っ赤にして


「ムリです!皆さん平等に、仲良くさんつけです」

「んじゃ、タメ口は?」

「もっとムリです」


なんていうから、


「ご飯食べてる時に言っちゃおうかなぁー」


とイジワル言ってみた。


「…学校着くまで考えさせてください…」


か細く絞り出すような声。


「うん。イイヨ」


校門まで着くと、意を決したようにこちらに向き


「お…お…及川…及川クン。
今日はありがとうございます」


君呼びに落ち着きましたか。
まぁ、第一歩かなぁー。
徹さんっていう候補はなかったのかな?新婚さんみたいじゃん?


「うん!遥ちゃん。今日は楽しかった!」
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