ひかりのおはなし 及川
□●めひらくひかり H
1ページ/5ページ
やさしいひかりにつつまれている…
とてもおだやかなきもち…
ゆびのさきから…むねのおくまであたたかい…
このひかり…とてもおちつく…
あんしんする…
****************
…目が覚めると、白い天井。
ピッ…ピッ…
少し前までの私なら聞き慣れた音…。
ここは、病室だ…。
2年もいたから慣れた状況で、別段驚きもしない。
でも、慣れた状況でも、いつもと違うことが…
左手に温もり…
目線だけそちらにうつすと、
窓が少し開いて風かそよいであたたかな茶色の髪が揺れている。
うつ伏せになった、その人の顔が少し見える。
その顔はあまり穏やかには見えない。
私の右手は、その人の手の中にあった。
コードにつながれた右手を伸ばし、そのあたたかな色の髪撫でる。
ワックスでまとまっている髪。ワックスつけなければ、きっと柔らかでふわふわしてそうな髪。
「及川…くん」
撫でただけでは反応がなかったけど、呼んだら、パチッと目が覚めガバリと身体を起こした。
「ふぁ…?
遥…ちゃん?
遥ちゃん!?
…遥…ちゃん…」
一つ目の私の名前を口にした時は目覚めてぼぉっとした顔
二つ目は、目覚めた私を見て驚いたような顔
三つ目は、私が微笑むと
目が潤み、くしゃっと崩れた顔
「起きた…よかった…。あ、看護師さん呼ばなきゃ」
枕元にあるナースコールを鳴らす。
「ここ…病院ですよね」
「うん。そうだよ。遥ちゃん、倒れて意識がなくって救急車を呼んだんだ。
あ…ごめん。バッグの中から生徒手帳勝手に出しちゃったんだよね。
救急隊の人に歳とか聞かれたから…。
そしたら、ここの病院の診察券も出てきたんだ。
ごめんね」
「いいえ。大丈夫ですよ。助かりました。
むしろ…ごめんなさい。
私…」
コンコン
女性の看護師さんが入ってきた。
「失礼します。ああ良かった。目が覚めたんですね。
戸隠さん、驚きましたよ。救急車で来るなんて」
「香川さん。すみません。また少しお世話になります」
看護師さんの名前は香川さんっていうんだ。
「さて。えっと、及川くんでしたっけ?外でてもらえます?」
「俺居ちゃだめですか?」
「女の子の着替えはダメでしょ。30分後位ならいいですよ」
!
「す、すみません」
パッと病室のドアまで移り
「また後でくるね。遥ちゃん」
そう言って病室から出た。
ドアを閉め
ふぅ…
一つため息
「岩ちゃんと監督に連絡してこよう…。
ほんとに良かった…」