ひかりのおはなし 及川

□●ひかりにふみだす C
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「岩ちゃーん!」


ガララッと体育館のドアを開ける。


「ぶっッ!」


顔面にバレーボールが当たる。

てんってんっころころころ…

ボールが地面に落ちて転がる。


「おっそいんだよ!ウザ川!」

「だからって顔面はないでしょ!?
大切な顔なのに!」

「どうでもいいんだよ。おまえの顔なんて。むしろ、うるさくなくなっていいかもな!」

「ひどい!」


岩ちゃんとワーワーやってると、遥が逃げようとしたので


「だーめ」


手を引っ張ってデコピン。

おでこを抑えながら目をパチクリする遥を体育館の中へと連れてはいる。


「岩ちゃん!連れてきたよ!」

「あぁ?…あ?…どちらさま?」

「ヤだなぁ。ずっも話してた戸隠遥さんだよ」


バレー部員がざわざわし始めた。

あの?
本当にいたんだ。
幽霊じゃないよね?
きれいな人だけど…
年上なんだっけ?


「はいはーい。静かにね」


パンパンと、手をたたいて静かにさせる。


「今日から、バレー部のマネージャーとして迎えることとなりました!戸隠遥さんです。仲良くするよーにネ」


ここまではいつも通りの口調で。この後は


「あ、でも、戸隠さんはおれのだから手は出しちゃダメだよ」


睨みをきかせて言った。


「あの。及川さんが言うこと全部OK出していないんですけど」

「え?そうだっけ?」


てへ

バシッ


「いったぁい!」

「半分誘拐まがいじゃないかよ。それじゃ」

「そんな事ないヨ!ね?」

「あの…バレー経験もないのにマネージャーなんて出来るんでしょうか。しかも、3年生ですよ?
現実的ではないと思います。」

「大丈夫だよ!皆最初は初心者だし。この及川さんがついてますから!」


バシッ


「いったいよ!さっきから叩きすぎだよ!岩ちゃん!」

「おまえだと余計に心配なんだよ。俺は岩泉一。このウザ川よりはまともだから、何かあったら俺に聞いてくれ」


握手のために右手を出す。


「あ!ダメ!岩ちゃん。ズルイ!」

「ウザ川ちょっと黙ってろ!
半分強引だったかもしれないけど、ここに来てくれた。バレーに少しでも興味があるなら、ぜひマネージャーやってくれないか?」


ぷ……ふふふ


「ど、どうしたの?戸隠さん。」


緊張で変なスイッチ入っちゃった?


「面白いですね。お二人。
笑ったのひさしぶりです。
あははっ。ごめんなさい。
毎日は病院に行くのでムリなんですけど、それでよろしければ」


岩ちゃんの出した手に握手をした。

俺はうれしくてうれしくて
戸隠さんに抱きついた。


「ありがとう!ありがとう!」

「わっ!及川さん。ちょっと」


岩ちゃんに襟首をぐいっと引っ張られはがされた。


「変なのが居るけど、変なのはこいつだけだから。よろしくな」

「はい」

「変とか言わないの。戸隠さんも、素直にハイとか言わないの」



こうして、念願の彼女がバレー部に入部してくれたのだった。
 

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