*一歩前へA*
□○仕方ないこと…?前編
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[楓視点]
ピピピッピピピッ
目覚ましの音。
ちなみにこれはスヌーズ2回目。
もぞもぞと手をのばして目覚ましを止めてゆっくり身体を起こした。
なんだか身体が重い気がする。
喉も治ったし、大分体調は戻ってるはずなんだけど、今日は重い。
シャッ
気分を上げるために、わざと音を立ててカーテンを開けた。
天気は晴れ。
だけど
「んー。朝焼けかな…」
今日は外に洗濯物を干して出かけるのは止そう。
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クラブハウス出勤時間よりも1時間早く家を出た。
手には自分のバッグの他に小さなトートバッグ。
中はサンドイッチとドリンク。
2人分。
待ってる人が居ると足取りがこうも軽くなるモノか。
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朝一で外出をしてお昼前に出勤になったある日。
「ただいま戻りました」
事務所のドアを開け、戻りの挨拶をみんなに向けてした。
私のデスクに這いつくばるようにヘバった茶色いボサボサ頭がいた。
「達海さん、どうしましたか?」
「ううぅん。
楓か。おかえりー」
上半身は突っ伏したまま、首だけひねって顔が見えた。
「そこ、私の席なんですけど」
「うん。知ってる」
「仕事したいんですけど」
「無理、どけない」
んー。困った人だ。
でも、よくよく見ると顔色が少し良くない様に見えなくもない。
「風邪ですか?」
額に手を当てたけど、そんなに熱くない。
水飲んでるか、運動はしてるか(…あまり出来ないか。)
よく寝てるか、メディカルチェックを入れていく。
「朝ご飯食べてます?」
「んー。最近食べてない。
寝てたいから」
「それですよ。一日の活力は朝ご飯からですから」
「だってさー、買いに行ったり作ったりすんのめんどうじゃんか」
「…仮にもスボーツに携わる人なんですから気にしましょうよ」
はぁー…
大きなため息を私が付くと、達海さんの目が光った気がした。
これは何か思いついた時の目。
「じゃあさ、楓は朝飯何食べてるんだよ」
「私ですか?パンかご飯ですかね。
作る時間も私もあまりないので、簡単にすませますけど」
ニッと達海さんが笑う。
「じゃあさ、俺のために作って」
…これか。
少し企み気味な顔だったのは。
「でさ、あの公園で一緒に食べよう」
「外で食べるの寒いですよ。中で食べませんか?」
「寒い方が頭がシャキッとする気がするだろ?」
な、いいだろ?と上目使いで言い寄ってくる姿は猫のようで、頭をワシワシとやりたかったけど…ガマン。
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で、結局毎朝作ってきて一緒に食べる事本日3回目。
ちょっと朝早起きするのは大変だけど、外で食べるのはこのうえなく寒いけど、ついでにお昼のお弁当も一緒に作れるし、何より達海さんと一緒に居られる時間が嬉しい。
もうすぐ公園に到着。
いつも達海さんが待っていてくれている。
この曲がり角を曲がれば公園が見えてくる。
胸を躍らせ公園を見つけると、
ベンチに座る達海さん
の隣に誰か座っている。