短いお話
□おっきい王様と私の王様
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今日は、待ちに待った三回戦。
──鳥野高校対青葉城西高校の試合!
「……っ、ここかあ…!」
「はああぁ〜…やーっと着いたわね〜」
友人と駅から乗り継ぎしてやっとのことで、目的地のこの試合会場に来ることが出来た。
友人二人は、もう疲れたとうなだれているけどそんなことはお構い無し!
ここに来たのは、れっきとした応援をするため。
普段、朝早くから夜遅くまで頑張ってたバレー部にとっては大切な試合…バレー部一年生も含め、皆さんの応援頑張らなきゃ…!
…よし、二人にも気合い入れてもらおう!
「───ほらっ、駄目だよ二人ともっ!我が校のバレー部のためにも応援頑張らなきゃ…!って……な、何?」
「ふふふ…………うっふふー?なあんでもなあいわよ〜ムフッ!」
「もへじにはちゃあーんと応援する相手がいるんだも〜ん、ねぇー?…ウフフ!」
「──う、うるさいな二人とも!黙んなさいっ!」
いいから行くよ!!と、ニヤニヤニマニマしたお馬鹿な友人二人を引き連れて会場へと入って行く。
まだからかって来る二人をペシと叩いて、『先に行ってていいよ』と一声かけると、試合開始までにはまだ時間があったため一度会っておきたい人を探しに行くことにした。
「───…もー…あの二人がからかうから会うの恥ずかしいじゃんかー……」
全く、とぶつくさ心の内で呟くも、これから会うべき人のことを考えるとほんとになんだか恥ずかしくて、自分でも心臓がきゅうってなったのがわかった。
選手のロッカールームへ向かっていた廊下でピタリと足を止め、一旦深く深呼吸。
……………………私も、これから試合だ。
「──ねぇねぇ、そこの可愛い子〜っ」
びくっ。
……え?…私、じゃないよね? ……………きょろり
「…………あの…私…ですか……?」
「そうそ〜う!だってここの廊下、君と俺しかいないよ?」
「あ、え…すみま───「ねぇ?」
はい、と言おうとして顔を上げた瞬間。
「え、」
背中にひんやりとしたコンクリートの冷たさと、甘ったるい声に綺麗な笑顔を浮かべた背の高い見知らぬ人を振り返って数秒後、なぜだか壁に追い詰められていた。
「…え……あ、あのっ…?」
「ん〜?なあに?」
いつの間にか私の左の壁に手をついて、するりと頬を撫でて器用に顎を掬われれば、びくりと無意識にも肩が震えた。
誰だろうこの人。
…私、知らぬ間に何かしたとか…
ど、どうしよう…っ、てか、顔近い、近すぎないっ…!?
ううっ…なんなの………!?
突然現れた見知らぬ彼に慌てていれば、頭上から甘ったるい声がかかる。