短いお話

□春、ふわり、キミと
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────ヤバイ。
死ぬ、俺、死ぬ。もう無理。神様。

「……〜〜っ、らあぁぁぁぁあああああ!!!!」

「「「(…ひ、日向!?)」」」

いつもの部活中ではよくある雄叫びというか、気合い入れとかよくよくあるが、ここ最近の日向のやる気は声だしや練習中の様子から気持ちがどこか別の場所にある気がしてならなかった烏野男子排球部一同。

そんな男子諸君も日向の様子をさぞ憐れむような、どこか温かい目で見守っていた。

「(駄目だ。駄目だ。今は今度の練習試合に集中だ。集中しろ、俺。勝って終わって、我慢してた分も好きにすればいいんだ俺。)」

まるで念仏かのようにその言葉を何度も頭に叩き込む。
あいつの柔らかいふわふわした髪撫でて、ふにふにしながらほっぺ摘まんで、弱点の耳甘噛みしたい。あと、そんで、次は、それから、あとあとあとあとあ、ヘブシッ!と盛大なくしゃみ。そろそろ終わりを告げる春の草花の花粉野郎が俺の脳内計画を中断させた。最悪。
くそ…ボール磨きするもへじが目の前にいるってのに………ちくしょう。

練習試合が近いと毎回こんな調子になる俺。自分で宣言したくせに、逆にぜんっぜん集中出来てねぇ。
──試合が近い期間は、もへじに一切触れない、と宣言したこの頃。
既に、“限界”という名の病魔が蝕んでいた。
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